大学生の頃だから、もう30年近くも前の話。たまたま知り合った伊藤忠の部長は、当時40歳。とっても大人に見えたことを覚えている。
彼は、安宅産業の伊藤忠への併合に関わるプロジェクトで敏腕をふるったそうだ。1977年、10大商社のひとつであった安宅産業の経営破綻に伴い、伊藤忠が吸収合併。当時は、石油ショックによる景気後退の只中にあり、恐慌を防ぐために政府・日銀までもが事態収拾に乗り出した一大事件だった。
ある時、彼は、連日の徹夜仕事が続き、書類を事務の女性にコーピーしてもらっている僅かな間に床に寝ていたそうだ。すると、戻ってきた女性が「死んでる!」と大騒ぎをして、大変なことになったそうである。「モーレツ社員」の典型のような人物だった。
彼は、決して弁の達つ人ではなかった。しかし、淡々と話してくれたひとつひとつのエピソードは、とても迫力があるもので、まさに事件の渦中にいたことをものがったていた。今思えば、ビジネスの生々しさに接した最初だったかもしれない。
彼は、自分の果たした役割やその難しさ、そして、どれほど働いたかを語ってくれたが、その語り口は、「やることはやった」という自信に満ちていた。その一方で、世間を知らない私の質問にも静かに耳を傾け、丁寧に応えてくれた。自慢話ではなかった。むしろ世の中を教えようとする教師のような語り口であったことを覚えている。時に感情を高ぶらせることもあったが、取り乱したり興奮したものではなく、その場の様子を理解させようとする彼の演出だったようだ。
私は彼の話を聞きながら「謙虚な人だなぁ」と思ったことを覚えている。こんな人の下で働きたいものだとも思った。
前回「謙虚」について書いたが、自信と謙虚は、同じ精神の有り様の異なった表現ではないか。簡単なことではないが、私もそんな人との接し方を心掛けたいと思う。
色々と異なる考えはあると思いますが、私の場合はセールスのプロセスは最終的には顧客自身が(我々のソリューションを選ぶということを)決定するためのサポートをあらゆる面でかつ最大の努力を払って行うことと認識しています。あくまでもDecision Makerは先方にあります。であるが故に、なぜセールス担当が傲慢になりえますか?但し現実には異なるケースが多いのは事実です。特に金融界では(国籍を問わず)顧客を下に見る輩が多いのは事実です。