「今は、何でも有りです。何が起きてもおどろきませんね。」
昨日、ご挨拶に伺ったSIerの営業担当役員の言葉です。彼によると、時間を掛けて仕込んできた官庁の入札案件。競争にはならずに確実に取れると考えていたそうです。しかし、思わぬ伏兵が現れ、相当安い金額で落札されてしまったとのこと。
民間と違って、景気刺激の意味合いもあり、官庁関係の案件は減ってはいないようです。そこに、今まで入札には参加してこなかった企業までが、案件を競い合うようになってきたようです。
大型案件が、ほとんどなくなってしまったという話は、しずくさんのコメントにもありましたが、こちらのSIerでも同じとのこと。大型案件が取れない中、それを小型案件を積み重ねてリカバーすることは、容易ではないと、ため息混じりに話されていました。
こういう状況にあっても、比較的安定して収益を確保している企業もあります。そういう企業の収益構造を見ると販売した機器の保守やサポート・サービスを自社で行うことや、BPO、ASPのように自社で業務体制を持っている企業、つまりストック・ビジネスの割合が高い企業です。お客様にすれば、このような業務をコスト削減といって切ってしまうことはなかなかできないわけですから、それは当然のことといえます。
このような時期だからこそ、SaaSやASP、BPOなどのストックビジネスへの関心がますます高まるだろうとの話は、以前にも書きましたが、システム・ベンダーの立場から見れば、景気に左右されず、安定した収益を確保できる事業形態として捉えることもできそうです。
また、一度契約されたお客様からは毎月安定して売上が発生するわけですから、月毎の売上の推移も、物品販売や受託開発、ライセンスビジネスに比べて、はるかに平準化され、そのため売上予測も精度高く予測できるので、経営者にとっては、大変魅力的なビジネスといえるかもしれません。
ただ、一方では、初期投資に相当の金額が必要なこと、また、利益が確保できる数だけお客様を確実に獲得できるかどうかといった問題。将来機能拡張が必要になったとき、それに柔軟に対応できるかなど、十分な検討を行わなければならないことは、いうまでもありません。
世間の景気がいいときは、ワンタイムの機器販売や委託または請負開発でも、十分に売り上げや利益が確保できました。しかし、そういう時期にストック・ビジネスにも積極的に投資し、確実に顧客を積み上げてきた企業との明暗は、この時期だからこそ、はっきりとしてきたようです。
ITビジネスの当面のトレンドは、SOやBPO、そして、ASPやSaaSなどの本来のサービス・ビジネスとなるだろう。これは、見方を変えれば、SIerやIT機器ベンダー「中抜き」時代の到来を意味する。
以前ブログでこんなことを書かせていただきました。まさにその動きが加速しそうな気配です。