“みぞうゆう”の不況。私は、長年IT営業に関わっていますが、これほどの厳しい状況は、過去に経験がありません。
お客様それぞれに事情は異なりますが、たとえ経済的な余裕があったとしても、今は何もしないほうが無難という心理が働いているようです。
「先行きの不透明感が原因」とマスコミや専門家と称する人たちは、喧伝しています。そんな人たちの言葉の絨毯爆撃が、世の中の「思考停止」を煽っている。そんな悪循環が、ますます景気を落ち込ませているようにも思います。
先日、ある不動産会社の社長と話をする機会がありました。彼によると「今が、買い」だそうです。「株式にしろ、不動産にしろ、今はどん底です。景気は必ず回復します。だから今は積極的に買って、景気の回復を待つべき」と、積極的に不動産や株式へ投資をしているそうです。
また、ランニング業界もますます盛んなようです。先日、大手スポーツ・ショップのマーケティング担当者と話をしたところ、冬場にもかかわらずスキーやスノボが、まったく振るわない。その一方で、ランニング・グッズの売り上げは伸び、売り場面積も増やしているとのこと。ちなみに、ランニング初心者が、最初の年に靴やウェア、サプリメントなどに支払う金額は、およそ18万円だそうでです。これ以外に、マラソン大会やそのための国内、海外のツアー料金などもあるので、その金額は、数十万円を越えるといわれています。
私も、練習で皇居を走っていますが、ここのところ確かにランナーが増えています。ある人が、人数を数えてみたそうです。水曜日の夜7時ごろには、500~600人前後の人が同時に走っているとのこと。皇居一周が5kmなので、一列に並べれば、1メートルにも満たない間隔で人が並ぶほどの混雑ぶりです。ランニング・ビジネスは、旬の様相です。
その一方で、スポーツジムが会員を集められない状況に苦しんでいます。入会金無料は当然のこととして、客単価を下げることになるので今まで手をつけてこなかった回数券を発行し敷居を下げるなどして、集客に躍起になっているとのことです。
学習塾は、元気がいいようです。お父ちゃんのお小遣いは削っても、子供の教育費は、惜しまないということだともおもいますが、生徒が減ることもなく、安定した収益を確保しているとのこと。さらにこの不況で、大学卒の退職者も多く、優秀な教師を確保するために、積極的に採用を増やしているとのことです。
IT業界にもちょっとした動きがあるかもしれません。それは、アメリカ企業の日本進出が、今後増えてくるのではないかということです。
ある外資系ベンチャー企業の社長によると、アメリカは、日本以上に市場が冷えているのだそうです。少しでもビジネスを増やせるのならばと、今まで積極的に考えることのなかった日本進出を真剣に考えている企業が増えているらしいのです。彼らにしてみれば、純粋にプラス・アルファですから、失うものはありません。
これは、やり方によっては、競合他社との差別化を図る有力な手段を手に入れられるかもしれません。まずはそんなところにも、アンテナを張っておくべきかもしれません。
それ以外にも先日紹介させていただいたデータ・アーカイビング、友人が経営する携帯メルマガ配信ASPなど、好調な企業もすくなくありません。
「不況」や「先行き不透明」という言葉で、多くの人たちが思考停止に陥っているなかで、個々の企業や業界、地域に目をやると、どれもが一律に同じ状況ではないことがわかります。確かに、全体の意欲が低迷しているとはいえ、この変化をチャンスと捕らえ、行動している人たちも少なくありません。
不況という雲を空の上から眺めていても、雲の下の街や人々の動きをひとつひつ見ることはできません。
私たち営業は、雲の下で、お客様と一緒になって考える機会を持つべきです。どうすれば、ネガティブなサイクルをポジティブな方向に向かわせることができるのか。お客様は、そんなソリューションを求めています。簡単なことではありませんが、お客様の先導役として、そのお手伝いをさせて頂くのが、ソリューション営業のあるべき姿だと思います。
そんな皆さんの取り組みが、お客様の意欲につながり、プロジェクトの立上げを促し、お客様の成長や改革となるのならば、ビジネス・チャンスは、きっと訪れます。
原点に立ち返り、ソリューション営業としての理想を追求する。そんな心構えが、必要な時代なのかもしれません。
■ 寄り道コラム ・・・・・
オバマ大統領の就任式典をテレビで見ながら、アメリカの国力の源泉を垣間見たような気がします。
就任演説を聴こうと集まった250万人の人々が、歓声をあげながら、彼のスピーチに応えています。
「自分たちに何ができるかを考えなくてはならない」。こんなメッセージにも、まさにそのとおりとでも応えそうに、こぶしを上げる人たち。単純思考といってしまえば、そういうことかもしれないが、こんな無邪気な思い込みが、アメリカという国の力の源泉なのかもしれません。
ショービジネスの国アメリカ、そんな国のマスコミの演出といった部分もあるだろうでしょうが、そういう演出をこころから楽しみ、これを機会に変革を遂げようという国民の意識があるからこそ、彼もまた自信に満ちたスピーチができるのでしょう。
同じ様なことを日本の首相が話をしても、「そのまえに、自分のやることをやりたまえ」というようなしらけた反応が返ってくるのが落ちでしょう。なんとも情けない限りです。
政治家個人の力量という問題もたしかにあります。国会という公の場で漢字のフリップを掲げて、「これ読めますか?」と一国の首相に質問をする良識のない国会議員。消費税改訂の期日を法律の附則に書くか書かないかといった瑣末なことで時間を費やす議員たち。
そして、このような話題を国家の一大事のごとく書き立てるマスコミとそれを揶揄し、「だからだめなんだ」と他人事のように批評する人々。
これを当たり前のごとく受け入れている私たち日本人の意識の低さに、改めて日本という国の非力さを感じてしまいます。