汎用コンピューターからクライアント/サーバーやオープン・システムへの変遷とともに生まれた「ソリューション」という言葉。その歴史的背景について、前回紹介いたしました。
今回は、営業の視点から、このソリューションの言葉の意味を考えてみようと思います。
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ITビジネスに関わる営業にとって、ソリューションという言葉は、とても身近なものです。
「我社のソリューションは・・・」、「御社に最適なソリューションは・・・」などとお客様に語ることもあれば、「これからは、ソリューション・ビジネスを推進し・・・」、「お客様の立場に立ったソリューションを展開します。」というように、経営者や会社が、プロパガンダのごとく使う場合もあるようです。
しかし、話をよく聞いてみると、ソフトウエア・パッケージやサービス商品のことを言っていたり、お客様志向の会社であることを説明する言葉として、使われる場合もあるようです。また、「ネットワーク・ソリューション・カンパニー」というように、単なる機器の販売じゃなくて、専門性が高く、サービスも含め、ネットワークのことなら何でもやりますよ・・・というような、上級感を演出する言葉としても使われることがあります。
先日、あるお客様で、「我が社は、機器販売が中心で、ソリューションが、まだできていないんですよ」というお話をされていました。そこで、「ところで、御社のソリューションとは、どのようなものでしょうか?」と質問させていだくと、どうもハッキリしません。機器販売じゃない、なにかサービス・ビジネスのようなことを考えられていらっしゃるようでしたが、明確な回答は得られませんでした。
このように見てゆくとソリューションという言葉は、実に様々な使われ方をしています。
また、ソリューションが、誰の課題を解決することなのか、曖昧に使われていることに気づかされることがあります。
「ソリューション=解決策」と言うわけですから、当然何らかの課題があって、それを解決する手段が、ソリューションという解釈になるはずです。
「誰のためのソリューションですか?」と営業の方に質問をすると、間違えなく全員、「お客様のためのソリューションです。」と答えます。
わたしは、「本当にそうですか?自分の営業予算(ノルマ)を達成するためのソリューションではありませんか?」と聞き返すと、ニヤリ・・・皆さんに心当たりはないでしょうか?
「ソリューションとは、お客様の課題を解決する手段」です。ソフトウェア・パッケージの別称でもなければ、ハイレベルなことができますよと言うことを説明するための修飾語でもありません。まず、この原点に立ち返って、考えてみる必要があります。
ならば、お客様の課題は何かということになります。お客様は、課題を解決したいのであって、特定の機器を購入したいわけではありません。
お客様が、特定の製品を営業に依頼するのは、それが課題を解決するための最良の手段だと思っているからです。
しかし、課題を解決する手段は、他にもあるかも知れません。お客さまの依頼にそのままお答えするのではなく、なぜその機器を必要としているのか・・・「なぜ?」と質問をしてみてはいかがでしょう。その質問で、お客様が機器を必要としている目的を知ることができれば、もっと効果的な手段やその他の手段との組み合わせを提供できるかも知れないのです。
ソリューションに特定の商品は、ありません。「商品がない」からスタートします。そして、お客さまの課題を明らかにし、その課題解決によって、お客さまのベネフィットをもっとも大きくできる商品やサービスの組み合わせ、つまり、お客さま個別のオーダーメイドの商品を作り上げる。これが、ソリューションなのです。
「我社のソリューション」などというものは、お客さまにとっては、どうでもいいことです。わたしなら恥ずかしくてとても言えません。
さて、皆さんは、お客さまの課題を起点にして、お客さまへの提案を考えていますか。
お客さまにとって、あなたの会社が解決できるかどうかは、重要なことではありません。どのような組み合わせが最適かを知りたいのです。もし、あなたの会社にできなければ、それも含めて、最適な組み合わせを示し、ここは我が社がやります、ここは、どこどこにお任せになるか、私どもで手配します・・・という提案をすればいいのです。
自分たちで全てを解決できるならば、それにこしたことはありません。しかし、そうでなくても、お客さまにソリューションを提供することはできるはずです。
これこそが、お客さまが期待しているソリューションなのです。