IBMがサンマイクロシステムズを買収するという記事が舞い込んできました。わたしがIBMで営業をしていた頃、サンマイクロシステムズは、常に強敵でした。
当時、わたしは、電気・電子系の製造業を担当していました。そのお客さまの技術部門では、事務系も技術系も両方こなせる共用の汎用メインフレームから、小回りのきく自分専用のエンジニアリング・ワークステーションへのダウンサイジングが急速にすすんでいました。
その先陣を切っていたのがサンとHPです。IBMは、RS/6000&AIXで対抗しようとしたのですが、時既に遅く、彼等に大きなシェアを握られ容易に食い込むことができなかったことを覚えています。
その後、サンは、オープン、ダウンサイジングの波に乗って事業を拡大し、90年代にSolaris/UNIXサーバーで全盛期を築いたのは、みなさんもご存知の通りです。
しかし、LiuxやWindowsの隆盛により、その勢いも影を潜め、StrageTekの買収などによるストレージ・ビジネスを強化してきました。また、Javaコミュニティーの盟主として開発ツールを提供することやオープンソース系データベースであるMySQLを買収するなどして、ソフトウェア分野でのビジネス強化も進めてきたのです。
しかし、ハードウェアの時代、それに続くソフトウェアの時代が終わり、サービスの時代に軸足が大きく変わりつつある中、サンの競合優位が、失われてしまったようです。
先日、サンに勤める友人と話をする機会がありました。早期退職制度を利用して近々退職するとのことでした。去年までも早期退職制度はあったのだそうですか、働き盛りの彼は、ずっと適用対象外だったそうです。しかし、今年は、適用枠が広がり、彼もその対象になったとのこと。もともと、才能のある人ですから、チャンスを待っていたのだそうです。
「これから何を売ればいいのか、サンとしてはむずかしいところです。」という話をしていたところに、こんなニュースです。ちょっと驚きました。
サンは、サーバー分野でデルに抜かれ、業界4位のシェアに甘んじています。また、IBMも1位を維持しているもののDellの猛攻に追い上げられています。それでも、大きなシェアを持つ両者がひとつになれば、競合するHPやデルにとって、大きな脅威になることは間違えありません。
ご存じの通り、「クラウド・コンピューティング」が注目を集めています。そうなると仮想化とサーバーによる大型のデータセンター・ビジネスがますます拡大することが予想されます。
こうした背景から米国では、データセンター分野で激しい競争が続いています。たとえば、HPはOpswareを2007年に買収し、昨年、EDSを買収しています。HPはこの両者の買収により、クラウド・コンピューティングを提供するデータセンター・ビジネスでイニシアティブを取ろうとしています。
それに対するIBMは、2007にBlueCloudを発表し、この分野で攻めの姿勢を崩していません。また、サンも自らOpenCloudを発表していますし、クラウド・コンピューティングでは、GooglやSalesfoce.comとともに先行するAmazonのAWS(Amazon Web Services)は、サンの機器を使用しています。
また、CISCOは自らの得意分野であるネットワーク機器と共に、データセンター向けのサーバー提供を準備をしています。
このような動きを見ると時代はクラウドを想定したビジネスへと潮目が大きく変わってきたようです。
以前から、たびたびクラウドを話題にしています。また、その結果として、ハードウェアやソフトウェアに頼るビジネスは、おおきな転換を余儀なくされると申しあげてきました。
IBMによるサン買収の動きは、そんな時代の到来を象徴する出来事と言えるかも知れません。