クラウドが、ビジネスになるのかという議論は、もはや意味がないと思う。Google、Amazonを見れば分かるとおり、すでに立派にビジネスとして成り立っている。
SaaS(Software as a Service)型クラウドの代表であるGoogle Appsは、GmailやDocsなど、パーソナル・プライベート・ツール(PPT)のクラウド化をターゲットとしている。これは、Microsoftのビジネスと完全にかぶっている。では、どちらが、お得なのか。
私が主催している「ソリューション営業塾」で、クラウド・コンピューティングの講義を行ったとき、Googleの有償サービスである、Google Apps Premier EditionとMicrosoft Office Enterprise 2007を比較した資料である。
これを見ると、Google Appsの年間コストは、Microsoft Officeの1/2であることがわかる。ただし、MS Officeの場合は、これ以外にも導入やアップデート、トラブル(MS OfficeかPCかどちらが原因かわからない場合も含めて)対応しなければならないので、さらにコストがかかることになる。
同一機能ではないので、単純に比較することもにも無理はある。しかし、日本ほど、見た目やブランドにこだわらない米国では、ユーザーがどんどん増えているらしい。
Amazonのクラウドは、システムのインフラを提供し、アプリケーションは、どうぞご自由にお作りくださいというビジネス・モデルだ。IaaS(Infrastructure as a Service)型クラウドといわれるものである。表現を変えれば、データセンターのデスクトップ化、つまり、個人でも、中小企業でも、設備の導入や運用管理を伴わず、データセンター・リソースを必要なだけ従量課金でお使いくださいというものだ。
例えば、いままでなら、ウエブ・ビジネスをはじめようとすれば、自分のところに置くか、データセンターに預けるかは別にして、相応のシステムを所有しなければならなかった。当然、システム構築にもコストがかかる。それがなくなる。そのため、中小企業でも、少ない投資リスクでウエブ・ビジネスをはじめられるようになった。
やはり、「ソリューション営業塾」で使った資料であるが、オンプレミス型(自身でシステムを所有し、運用管理するシステム利用形態)とクラウド型でのシステム開発形態の違いを整理したものである。
Amazonのクラウドサービスは、このような中小企業の需要に支えられて、これまた急激にユーザー数を伸ばしているらしい。
ただ、これらクラウド・サービスも、稼働率という点では、まだまだたよりない。Googleは、Google Appsの稼働率を99.9%としている。これは、年間でおよそ8時間停止することを意味している。ただし、メンテナンスなど、事前に計画され、通知されるシステム・ダウンについては、含まれていない。
また、Amazonは、その中核となるサービスEC2の稼動率を99.95%としている。これとて、年間4時間の停止である。
これに加えて、パブリックなネットワークを利用するとなると、その稼働率や信頼性も考慮しなければならないので、実質的な稼働率は、もっと低下すると考えるべきだろう。
一般的に、大手銀行などの場合は、稼働率は限りなく100%である。具体的には、99.9999%の保証が求められる。これは、年間30秒程度の計算になる。
ここまでの稼働率は、ともかくとしても、小数点以下一桁や二桁程度では、基幹業務で使うには、心もとない。しかし、PPTやエンターティメント系のウエブ・アプリケーションであれば、問題ないレベルといえるかもしれない。
稼働率については、両者とも重要な課題として取り組んでいるようなので、このあたりは、いずれ改善されるだろう。しかし、そんな先のことを考えなくても、使える業務領域は、いくらでもあるように思う。
また、そもそも、中小企業であれば、基幹系とて、99.9%の稼働率さえ維持できていないところも少なくない。そんな現実を考えれば、「基幹系でも使えるところがある」と考えていいのではないだろうか。
しかし、これは、GoogleやAmazonだからできることであって、わが国で同じ様なサービスを提供できるのだろうかと考えると、簡単なことではない。
では、どうすればいいのだろうか?次回、その点について、もう少し掘り下げてみようと思う。
どうすれば、新しいビジネスを立ち上げられるのだろうかを、考えてみませんか?
7月10日(木)、11日(金) 東京・茅場町
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