「唖然」。被災地を訪れた方は、同様の印象を持たれる方も多いのではないでしょうか。
何もかもかもが破壊し尽くされ、木っ端微塵に砕け散っている。ビルの鉄骨や線路も飴のように曲がり、自動車はまるで粘土でもこねるかのようにぐちゃぐちゃになっていました。
テレビではどんどんと水が押し寄せてくる光景が映し出されていました。しかし、その下で水は大きくうねり、渦を巻いていたのだそうです。その渦に巻き込まれ、いろいろなものにぶつかりあいながら、まさに粉々に様々なものを砕いていったそうです。
がれきをみるとよくわかりますが、どれも形をとどめていません。まさに粉々です。映し出された映像からはみることのできない大きな力が、街をこんなにまで破壊し尽くしてしまいました。
この写真は、南三陸町の商店街があったところだそうです。何も残っていません。改めてこの場所に立ち、テレビはみることのできない津波の恐ろしさをからだ全体で感じてくることができました。
7月10日(日)、私たち10人は、震災直後から被災地でボランティア活動をされているトライポッドワークスの佐々木さんにつれられて、南三陸町の避難所を回り、生活用品やパソコンを届けるお手伝いをしてきました。
佐々木さんの会社は、仙台に本社を構えるIT企業で、セキュリティ機器の製造販売で業績を伸ばされています。5月9日に開催した「緊急営業会議:3.11後のITビジネスと営業の役割」というイベントがきっかけで知り合うこととなり、今回の南三陸町訪問となりました。
彼は、「ITで日本を元気に」という団体を立ち上げています。この団体は情報の入手も発信もままならない被災地にパソコンを配り、情報の断絶を解消し、地元からの声を直接届けられるようにしようと取り組んでいます。全国の企業や団体、個人から新品や中古のパソコンをもらい受け、それを現地に届けつつ、避難所に現地が求める生活物資を届ける活動をされています。
「私に何ができるのだろうか」。そんなことを漠然と考えていました。そんなとき、彼と出会う機会がありました。彼は、東北の企業が、この震災でますますビジネスのチャンスを減らしていること、この事態を脱するためには、東北という限られた市場に留まることなく全国に、あるいは、世界に市場を広げてゆかなくてはならないこと。東北には優秀でまじめな人材がたくさんいること・・・などを話されていました。
彼が仙台に会社を興したのもこの優れた人材を期待したためとのこと。そして、はじめから市場を東北ではなく東京や全国に定めて事業を始められ、大変なご苦労もされたようですが、今は大きく業績を伸ばされています。
「地元の大企業の下請けに甘んじているだけではますますじり貧になる。全国に発信できるマーケティング力や営業力を持たせなければ、この震災でますます元気をなくしてしまう」。佐々木さんのそんな話を聞いて、「これだ!」と思いました。
「佐々木さん、マーケティングと営業の実践ノウハウについて研修会を開けないでしょうか。」そんなことがきっかけで、「緊急研修会:ビジネス開発力養成講座@仙台」を7月11日(月)に開催することとなりました。私にできるささやかなボランティア活動となりました。
佐々木さんから、「その前に地元の実情をみておいてほしい」とのお誘いを受け、今回の南三陸訪問となったわけです。
今回の訪問の最大の成果は、「若い人たちのがんばり」そして「力強さ」を実感したことです。
「千年に一度の出来事なのに何もしないではいられません。」と東京の会社を辞めてボランティアのリーダーとして活躍している人、自らも被災し自宅もお店も流されてしまいながらも大きな避難所の炊事班長として、腕をふるっているレストランのオーナー、家族を亡くしながらパソコンの配布に汗を流す女性、様々な方と話をさせていただき彼らのたくましさに元気をもらいました。
「この震災で地域のコミュニティが崩壊してしまいました。また、避難所も抽選でどこに入れるかわかりません。ますます孤立感を深めている人たちも少なくありません。」自らも被災者である20代の青年はパソコンで最新の情報を届け、ウエブ上でコミュニティを再生し安心感を広げたいと、佐々木さんの取り組みに協力していました。彼は、連絡もままならない地域に分散する11の避難所の連絡会を立ち上げ、情報の共有や意見のとりまとめ、行政との交渉などに奔走しています。
「最近の若いやつら」が、生き生きと活動している姿に、「こりゃあ、おじさんも負けてはいられない」と思わずにはいられませんでした。
南三陸町の訪問で、スイッチが入りました。この震災は、大きな被害をもたらしましたが、これからを担う若い世代が力を発揮し、元気にしてくれています。どこかの国の政治家が未だ内輪もめに明け暮れ、これからの道筋をはっきりと示さないなか、彼らは文句も言わず自分たちの力で道を切り開いている。ささやかながら、これからも彼らを信じ、彼らに任せ、彼らを助けることができればと考えるようになりました。
翌日の「緊急研修会:ビジネス開発力養成講座@仙台」も定員を超える参加となり、地元のみなさんの熱意を受け止めて参りました。そのあたりは、こちらをご覧ください。
たった数日の経験ではありますが、いろいろなことを感じ、学ぶことができました。
震災直後に比べれば、生活はだいぶ改善されたそうです。しかし、震災直後のように支援物資が届くことは少なくなりました。また、季節も変わり、必要なものも変わってきています。それを買うにも店もなければ、お金もない人がまだまだいっぱいいます。まだ終わっていないのだということを、実感することができました。
改めて、自分にできること、そしてITのできることを考えてみたいと思っています。
先日、当社内においても、当社にて何が出来るかを業後に有志で議論しあう場がありました。斎藤さん、素晴らしいですね。
今、人間同志が助け合い励ましあうことの大切さを学ぶ良い機会なんだと思います。
hiroshi tamaru