「これからのSIビジネスはどうなるのでしょうか?」
ここ最近、こんな質問を頂く機会が増えたように思います。まあ、私がそんなことをよく言っているからかもしれませんが、これまでにも増して危機感をもたれている方が増えてきたことは確かです。
こういうご質問には、開口一番・・・「なくなると思いますよ。」などと言うものですから、最近は夜道を一人で歩くときには、後ろに気をつけるようにしています(笑)
さて、無責任な話ばかりしていても顰蹙を買うばかりです。そこで、これからのSIビジネスについてどうなるのか、そして、どう対処してゆくべきかをプレゼンテーションにまとめてみました。よろしければご覧ください。
「ポストSI時代」、私はこれからの時代をそう位置づけて考えてみてはどうかと思っています。
これまでの、SI=(受託+請負+派遣)ビジネスは、ますます厳しいものになるでしょう。グローバル化や市場環境の変化の速さに対応し、これまで以上に経営スピードの加速が求められています。情報システムはこの課題に応えなくてはなりません。それは、「コア内製」と「ノンコア・アウトソーシング」という二つの軸で考えてゆくとわかり易いと思っています。そして、クラウドは、この動きを支え、加速する役割を果たすことになるでしょう。
クラウドは、ユーザーによる「セルフサービス」を支え、情報システムに「アジャイル(俊敏さ)」と「スケーラビリティ(資源の増減に対する柔軟性と自由度)」を与えることになります。つまり、SIerに仕事を頼まなくても、ユーザー自身が容易にシステム資源の調達や変更、アプリケーションの構築や利用ができる手段なのです。また、「IT資産の呪縛からの解放」でもあります。
この革命的出来事は、モノありきを前提としたこれまでのSIビジネスを不要にする流れでもあります。また、情報システム部門にとっては、自らリスクをとりシステムの構築や運用に責任を持つことが求められます。これは、大きな負担の増大です。これまではSIerに任せていたことを自分たちでやらなくてはなりません。スキルや意識の大きな変革を求められることになります。その意味では、両者の利害は、今のところ一致しているといえるでしょう。
しかし、経営者の目線で見れば、これは、なれ合いの上に築かれた不合理であって、時代の流れに逆らうものと映るでしょう。情報システム部門が自ら変わることができないのであれば、その権限を剥奪するしかありません。情報システム部門の権威の低下、そこに連なるSIerは、一蓮托生に退けられることになるはずです。
このプレゼンテーションにも掲載しましたが、米ガートナーの予測によると、2017年には、CIOよりもCMOが費やすIT投資の方が多くなるとし、2019年には、IT関連予算の9割は、IT部門以外が持つことになるだろうと予測しています。
つまり、ビジネスのあらゆるセグメントがデジタル化され、ITは情報システム部門だけのものではなくなるとしています。ますますもって、従来のアタマしかない情報システム部門、そしてSIerにとっては、つらい時代がやってくることになります。
このような変化は、これまでの延長線上で捉えることはできません。位相が変わるパラダイム・シフトの到来です。
これまでの常識が非常識となり、非常識が常識となる時代、当然、これまで稼げてきた仕事のやり方やスキルが、使えなくなる時代なのです。
しかし、その一方で、ITはこれまで以上に事業戦略を体現する手段としてその重要性を増すことになります。新たなビジネス・チャンスの到来です。
このチャンスを活かしてゆくための戦略や施策を組み立てなくてはなりません。ただ、何が正解かは、だれもよくわかりません。経営者にそれを求めたとしても、無理な話です。
私は、この事態に対処するためには、変革を進める若い人たちによる小集団をいくつも作り、彼らの自律を促し、自己組織化によって解決策を出させてゆくことが賢明な策ではないかと思ています。つまり、事業改革にアジャイル手法を適用してはどうかという提案です。
そのために、経営者は、これからを見据えた明確なビジョンとミッションを示すことが必要です。そして、ミドル・マネージメントは、過去の栄光を棚上げし、彼らに答えをゆだねることです。そして、失敗してもその屍を拾うことを約束し、チャレンジを促すことに徹するべきだと思います。かつての成功の法則は通用しません。それを受け入れることには、抵抗があるでしょう。でも、それが時代を担う若者を育てることなのです。
このプレゼンテーションには、イノベーションとは何か、モバイルとクラウドがもたらす本当の変化、日米のビジネス文化の違いなどについても触れています。
それらについては、これまでもこのブログで書いてきましたので、あわせてご覧頂ければおわかりいただけると思います。
「イノベーションは創造的破壊をもたらす」
近代イノベーション論のきっかけを作った経済学者・シュンペーターの言葉です。クラウドやモバイルは、まさに、情報システムのこれまでの常識を破壊するイノベーションといえるでしょう。そして、それは、新しい常識の創造でもあります。
その推進者にならなくてはなりません。それができないのであれば、せめて、その担い手の足かせにはならないことです。
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