私:DXとデジタル化の違いについて教えてください。
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ChatGPT:DX (Digital Transformation) は、ビジネスのあらゆる領域においてデジタル技術を活用することによって、新しい価値を創造し、ビジネスプロセスを改革することを意味します。DX は、ビジネスのあらゆる側面を見直し、デジタル技術を活用して、より効率的かつ迅速なサービスを提供することを目的とします。
一方、デジタル化 (Digitalization) は、物理的なものをデジタル形式に変換することを意味します。これは、文書や写真などのアナログデータをデジタル形式に変換することを含みます。デジタル化は、データを保存し、共有し、加工することが簡単になり、これによってビジネスのより良いフローを実現することができますが、DX に比べるとより基本的な概念になります。
結論として、DX は、デジタル化を活用してビジネスの変革を図ることを目的とするのに対し、デジタル化は、物理的なものをデジタル形式に変換することを意味します。
なかなか的を射た回答です。他にもいろいろ試してみましたが、かなりまともです。意地悪な質問を投げかけても、それっぽい答えが返ってきます。間違った答えでも、巧みに文章を組み立てて、自信を持って答えを返してくれるところは、どこかの国の政治家よりも、優秀かも知れません。
このChatGPTの開発元であるOpenAIに対して、Microsoftは、向こう数年間で数十億ドルの出資を行うと発表しました。従来の検索を置き換えるとして、話題になっていますが、これに留まる話しではありません。Microsoftは、将来この技術をWordやExcel、OutlookなどのOffice製品に組み込んでくるでしょう。ソフトウェアと相談しながら、ああしてくれ、こうしてくれとお願いするとレポートを書き、企画資料やプレゼンテーションを作ってくれる時代になるかもしれません。また、Microsoftは、3秒の音声データから話し手の声を学習し、その声でテキストを読み上げることができる言語モデルVALL-Eを発表しています。これと組み合わせれば、そうやって作った資料のプレゼンテーションも、任せられるかも知れませんね。
他にも、ソフトウエア開発に使われているPower Appsには、既にこのような仕組みが組み込まれ、対話しながらソフトウェア開発ができるようになっています。GitHubのCopilotにも同様の技術が使われ、プログラミングを支援しています。
まだ初歩的な段階ですが、AI技術の急速な発展を考えれば、ソフトウェア開発の生産性を劇的に向上させ、プログラミングのスキルがなくても、まともなソフトウエアを開発できるようになるでしょう。これにより、内製化はさらに拡がるかも知れません。工数需要を前提としたSIerのビジネスモデルの前途は多難です。
そんなChatGPTの元になったGPT-3が登場したのは、2020年です。このGPT-3のベースとなった自然言語処理モデルのTransformerは、2017年に登場しています。さらに、その土台となる機械学習のアルゴリズムである深層学習(ディープラーニング)が注目されることになったのは、2012年です。この年に開催された国際的な画像認識アルゴリズムの性能コンペで、深層学習を使ったソフトウェアが、他に大差をつけて圧勝したことが、きっかけでした。
ディープラーニングは、当初こそ画像認識のアルゴリズムでしたが、その後、言語、音声などにも使われ、文章の生成、対話応答、機械翻訳などにも使われるようになりました。また、言葉から画像や動画、音楽を生成し、異常検知や病気の診断、創薬の支援、物理や数学の新しい証明方法の発見など、その応用範囲は、拡大し続けています。まだ、登場して10年ほどの技術ですが、既に私たちの生活やビジネスに広く使われるようになりました。
インターネットが登場したのは、1990年です。1990年代、企業が会社のホームページを作ると、そのことが日経新聞に掲載されました。30年程前の話しです。スマートフォンは、2007年に発売されたiPhoneがきっかけとなりました。いまから15年ほど前の話です。
インターネットの登場から30年、スマートフォンの15年、ディープラーニングの10年と、デジタル・テクノロジーの進化は留まることはなく、その適用範囲は拡大し続けています。そして、もはやそれ以前の状態に戻ることをできなくしてしまいました。
そんなデジタル・テクノロジーは、次のような変化をもたらしました。
コスト・パフォーマンスの向上
- ひとつのタイトルが、何千円もしていたCDやDVDによる楽曲や動画を、聴き放題、見放題で、月額千円程度にまで引き下げた。
- ちょっと話すだけで数千円、数万円かかった国際電話の料金を、音声と画像で会話できるテレビ電話を無料で使えるようにした。
- RPAを使って、年間100万時間以上のPC作業を削減した。これを人件費換算すると、およそ10億円(時給1000円×100万時間)/三井住友銀行を中心とする三井住友フィナンシャルグループ(FG) など。
スピードの向上
- 数日かかっていた郵便が、電子メールやチャット、ファイル転送により、数秒に短縮した。
- 膨大な時間を費やした調べ物をネット検索で大幅に短縮した。
- 工場や倉庫の自動化で、作業時間を大幅に削減した など。
多様性の拡大
- デジタル・ワークプレイスや電子ワークフローにより、出社しなくても、出社したときと同様の仕事ができるようになり、ワークスタイルの選択肢が拡がった。
- その場所に行かなくても世界中の商品やサービスを、オンラインで購入したり、利用したりできるようになった。
- オンラインで世界中の情報を検索し、専門性の高い教育を(無料または低料金で)どこからでうけられるようになった など。
DXの喧騒は、このようなデジタル・テクノロジーの進化を企業が積極的に取り入れなければ、社会から退場させられるのではないかとの漠然とした危機感が、背景にあります。
その一方で、自分の仕事が奪われてしまうのではとの懸念や新しいことをやることへの面倒さから、「総論賛成、各論反対」で、なかなか実践に結びつかないという現場もあるようです。その裏には、「定年まであともう少しだから、それまでは、自分が身につけたこれまで通りのやり方で、済ませたい。」という本音が、あるのかも知れません。あるいは、「季節が変わって冬を迎えたけれど、衣替えが面倒だし、お金もかかるので、夏服のままで過ごしたい。そのうちまた夏が来るから、少しの我慢だ。」ということかもしれませんね。
ただ、前述の通り、テクノロジーの進化は、加速度を増し社会や人々の行動様式を変え、産業構造や競争原理が変化しています。これは、不可逆的な変化であり、また夏が戻ってくることはないのです。
この変化に適応できなければ、事業継続や企業存続が難しくなります。これ対処するために、ビジネス・モデルや業務の手順、顧客との関係や働き方、企業の文化や風土を変革しなければなりません。つまり、デジタル前提の社会に適応するために会社を作り変えなくてはならないのです。DXは、そのための取り組みです。
だからと言って、デジタル・テクノロジーを使えば、それでいいというわけではありません。簡単に言ってしまえば、いまの人間がやっていることを、できるだけデジタルにまかせ、人間にしかできないことに、自分の役割を移すことです。
デジタル・テクノロジーを駆使して新規事業を立ち上げるにしても、業務の効率化を図るにしても、いかなる課題を解決するのか、どうすれば、お客様や社会が、よりよくなるのか、そのために何をすべきかを決めるのは、人間の興味や関心であり、価値観や情熱です。AIがどれほど進化しても、何をしたいのか、何を解決したいのかは、人間が決めなくてはなりません。
デジタル・テクノロジーは、そういう人間の決めたことを、人間にはできないコスパ、スピード、多様なやり方で実現してくれるツールに過ぎません。デジタル・テクノロジーは、勝手に何でも解決してくれる魔法の杖ではないのです。
だからこそ、デジタルにできることは徹底してデジタルに任せ、人間にしかできないことに人間は徹することができるようにしなくてはなりません。そうすれば、ますます人間のできることが増えてゆきます。そうやって、デジタルの役割と人間の役割を最大限に発揮して、両者の相乗効果で会社や社会をよりよいものに変えてゆくことが、DXの目指していることです。
見方を変えれば、DXとは、人間力を活性化し、人間らしく生きる機会を増やすための変革です。デジタルの進化は、この機会をどんどんと増やしてくれるのです。
デジタルの急速な発展は、それ以前の状態に戻ることのできない不可逆的な社会システムや人々の行動変容をもたらしました。このような変化は、これからも続きます。ならば、この変化を積極的に受け入れることです。過去のやり方にこだわり、これを変えようとしない態度は、座して死を待つだけの話しです。
では何をすればいいのかとなりますが、アナログな思いこみや常識を疑い、デジタルでやったらもっと便利になり、自分のできることが増えるのではないかと考え、身近なことから手を付ければいいのだと思います。新しいことを始める前に、まずは「いま」を捨て去ることから始めなくてはなりません。その上で、それを置き換える新しいやり方をデジタルに求めればいいわけです。
これを繰り返せば、そのうち、無理して、頑張ってデジタルを使わなくても、デジタルの良さが自然と身につき、デジタルを前提に考え行動することが当たり前になるはずです。これこそが、DXが目指す風土や文化の変革です。
デジタルを使うことを目的に、使ったことを成果として、「DXを実践したぞ!」と誇っても、それでは、意味がありません。このようなことを繰り返し実践することを日常にすることが、DXの実践なのです。
SIerもまた、このようなテクノロジーの発展に対応して、自らの会社を作り変えなければ、お客様に見放されてしまいます。DXをお客様への脅し文句として使い、危機感を煽って、これまで通りの工数仕事を手に入れようとするのではなく、自らの置かれている危機的状況を真摯に受け止め、自分たちが率先して変革に臨むべきです。そこで学んだノウハウなくして、お客様のDXの支援は、難しいでしょう。
では何をすればいいのでしょうか。これについて、ChatGTPに尋ねたところ、なかなかのアドバイスをくれました。
私:工数需要を前提としたSIerのビジネスモデルは、今後難しくなると思うのですが、どうでしょうか。そして、そのどのような対策が考えられるでしょうか。
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ChatGPT:工数需要を前提としたSIer(システムインテグレーター)のビジネスモデルは、未来においては難しくなる可能性があります。これは、デジタル技術の進歩により、多くのサービスやソフトウェアが自動化され、人手不要になることが原因です。
このような状況に対応するためには、次のような対策が考えられます。
- サービスの多様化: 工数需要が減少する中でも、他のサービスに注力することが大切です。例えば、デジタルトランスフォーメーションのサポートや、クラウドコンピューティングのサービスなどを提供することができます。
- 技術力の向上: 自動化されたサービスやソフトウェアの提供には、高い技術力が求められます。このため、常に技術力を向上させることが重要です。
- 新規ビジネスモデルの開発: 工数需要が減少する中でも、新しいビジネスモデルを開発することで、新しい需要を創出することができます。
- 協業やパートナーシップの構築: 他の企業やビジネスパートナーと協業することで、より多角的なサービスを提供することができます。
これらのような対策を講じることで、SIerのビジネスモデルは、今後も持続可能なものとなることが期待されます。
ChatGPT、恐るべしです!さっさと過去の常識にしがみつくのは辞めて、ChatGPTのいうような取り組みを始めてはいかがでしょうか。
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斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
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