センスとは、「ふさわしい状態を作れる能力」であると、前回のブログで、申し上げました。
提案資料のセンスの良さは、中身がしっかり詰まっていることではなく、伝えたいことを的確にわかりやすく表現していることです。トークのセンスの良さは、話しの流暢さではなく、相手の興味や関心に寄り添っているかどうかです。プレゼンのセンスの良さは、ビジュアルの美しさではなく、聴いている人たちの反応に合わせて、話しの展開をコントロールし、共感を引き出して、相手を話しに釘付けにすることです。
そんな、営業センスは、次の3つの行動習慣を心がければ、身につけることができます。
- 課題から考える 解決策に囚われない
- 抽象化する 具体に囚われない
- パターンを探す ルールや分野に囚われない
課題から考える 解決策に囚われない
課題とは、実現したい「あるべき姿」と「現実」とのギャップのことです。そんな課題を明らかにするには、「何ができるか」ではなく、「何をすべきか」を徹底して考え、議論することから始めなくてはなりません。
当然、自分たちの能力やスキル、お客様の予算や組織などの制約があるわけですが、まずは、それらの制約を一旦忘れることが大切です。また、自分たちが提供できる製品やサービスも一旦忘れてください。お客様にとっての理想の「あるべき姿」は、どうあるべきだろうかと考えてみることです。
そんな「あるべき姿」と「現状」には、ギャップがあります。そのギャップを無くしたいという「意欲」があるのなら、それは、解決すべき「課題」となります。
課題=(あるべき姿−現状)×意欲
こんな等式がなり立つかも知れません。
市場調査を繰り返すだけでは、課題はみつかりません。見つかるのは、「解決したい事実や現実」、つまり「現状」です。この現状をどのような「あるべき姿」にすべきか、それを実現したいという「意欲」はあるのかをはっきりさせます。
「何としてでも解決したい意欲のあるギャップ」すなわち「課題」が決まります。
理想の「あるべき姿」に近づくには、広範な知識が必要です。様々な選択肢を持ち、それらを関連付ける能力が必要です。前回のブログ「営業センスは知識力」で申し上げたとおりです。
知識が狭いと自分たちが提供できるサービスや商材、経験値の範囲で答えを出そうとしてしまいます。それは必ずしも、お客様にとっての最善ではないかもしれません。自分たちにできる、できないにかかわらず、お客様にとって理想の「あるべき姿」は何かを、お客様と一緒になって、徹底して考えぬくことが、まずは心がけるべきです。
そんな「あるべき姿」と「現状」とのギャップを埋めるための手段が「解決策」です。自分たちができることで解決策を考えるのではなく、お客様にとっての最善策は何かを見つけなくてはなりません。それが、自分たちでできることであれば、ビジネスになります。しかし、それができなければ、できる他の会社と一緒になって、提案するというやり方もあるでしょう。あるいは、自分たちにはできないことを潔く告げることも、時には必要です。
そういう態度が、お客様との信頼関係を生みだします。そんなお客様との信頼関係があれば、その時には案件にならなくても、次の機会には、真っ先に相談されるでしょう。そんなお客様が、沢山いれば、売り込まなくても案件には困りません。全ての案件を数字にできなくても、結果として数字はついてきます。
抽象化する 具体に囚われない
お客様ごとに事情も違い、ひとつとして同じ状況はありません。だから、最善の解決策は、お客様ごとに全て異なります。だだ、解決策を抽象化する、つまり何が重要で、何が補完的かを整理してゆくと、お客様に受け入れられる理由が整理できます。具体的には、次のようなことをすればいいでしょう。
- 解決策が受け入れられ、うまくいったケースで、その理由を考えて、その要因を洗い出してみる
- それらをカテゴリー分けして、整理する。
- うまくいく時は、どのような要件を満たしているときかを洗い出し、書き出してみる
上記の手順を繰り返せば、成功する場合に共通する要因の類似性、あるいは、規則性を見つけ出すことができます。
ただ、注意しなければならないのは、成功の要件が時間とともに陳腐化することです。もちろん、時間が経っても陳腐化しない、基本的な要件もありますが、社会環境の変化やテクノロジーの進化は極めて速く、日々見直してアップデートすることを忘れてはいけません。
パターンを探す ルールや分野に囚われない
「課題から考える」と「抽象化する」を繰り返してゆくと、こういうケースなら、これが成功の要件だ、こちらのケースなら、こちらの要件がうまく当てはまるといった、お客様の状況と成功の要件の組合せ、つまり正解のパターンが見えてきます。そんなパターンを沢山持つことができれば、それぞれのお客様に最適な解決策を直ぐに絞り込むことができます。
沢山のパターンを持っておけば、お客様とのわずかな会話で、「ならばこういう解決策はどうでしょう」と、かなり的を射た「解決策の仮説」を直ちに提示することができ、お客様からは、「こいつ、なかなかできる営業だな」となるわけです。そうなれば、お客様からの信頼はさらに高まり、お客様との対話も深まるでしょうし、お客様からは、何かあったら、真っ先に相談してもらえる存在になります。
これは、「抽象化する」こととも共通しますが、「パターンを探す」ためには、やはり広範な知識が必要になります。自分の仕事に関わるかどうかで選択するのではなく、分野を問わずに、いろいろなことをつまみ食いすることです。「知識の引き出しを増やす」ことです。最初はどの引き出しも少ししか知識は無いでしょう。でも、これは面白そうだと思ったら、そういう知識を掘り下げて、引き出しを一杯にすればいいのだと思います。そうすれば、抽象化も、パターン化も苦労せずにできるようになります。
「課題から考える」、「抽象化する」、「パターンを探す」ことを心がければ、営業センスは磨かれてゆきます。
「こういうことはコンサルタントの仕事で、営業には必要ないのでは?」
そう思う人がいるかも知れませんが、上記の方法論に従い考えてみると、この質問の間違いに気がつくはずです。
課題から考える:営業は、「どのような状況にあっても数字を達成すること」が「あるべき姿」です。それを達成するためには、お客様の課題をあきらかにして、最善の解決策をしめさなくてはなりません。それが、いまの自分のスキルや知識ではできないから、数字を達成できないでは、営業失格です。自分にできなければ、できる人を連れて行くという手があります。あるいは、必死に学んで、知識を身につけル必要があるかも知れません。
現状に囚われることなく、課題から考えれば、自分の営業としての課題が見えてきます。
抽象化する:お客様に取っての営業の存在意義は、突き詰めれば、お客様の「先生」になることです。先生であれば、お客様も相談したくなりますし、先生に言われたのなら、それに従いますとなり、売り込む必要はありません。競合もおいそれとは、先生と生徒の信頼関係に割り込むことはできません。
パターンを探す:先生になるためには、お客様のいかなる相談に対しても、直ぐに適切な答えを出せるように沢山のパターンを持っておけばいいのです。そうなれば、先生としての信頼はさらに深まり、強固になります。そんなお客様を沢山持てば、数字は結果としてついてきます。
やっていることがコンサルタントと同じだというのであれば、それだけのことです。これができなければ、営業の「あるべき姿」すなわち「どのような状況にあっても数字を達成すること」はできません。ならば、やるしかありません。
営業とはこういうものだという一般論で、自己規定すべきではありません。そんなことをしていては、数字が上がらないだけではなく、自分の成長の足かせになります。
「課題から考える」、「抽象化する」、「パターンを探す」ことをこころがければ、「この営業さん、なかなかできるじゃないか」とお客様から見られるようになります。つまり「営業センス」抜群の営業になれるというわけです。
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2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー