このブログでも以前取り上げましたが、ITビジネスの土台は、「作る技術」から「作らない技術」へと、急速に変わりつつあります。
10年前であれば、お客様の要望に応えてシステムを作るには、組織力を使って、「作る技術」を持つ人材を大量に集め、膨大なコードを書いてシステムを構築するしか、方法ありませんでした。しかし、いまでは、「作らない技術」を持つ少数精鋭で、できるだけコードを書かずに、OSSや既存のクラウド・サービスをAPIで繋げて、システムを構築することができるようになりました。
この結果、システムの構築コストは劇的に下がり、最新の技術をいち早く利用でき、変化への即応力も手に入れることができるようになりました。
ユーザー企業のシステム内製が、拡がっているのもこれが理由です。もちろん、変化が早く未来が見通せない世の中になり、圧倒的なスピードを手に入れたい、あるいは、ITを前提に競争優位を築きたいといったユーザー・ニーズが、内製化への需要を高めていることは言うまでもありません。ただ、それはいまに始まったことではありませんが、「作らない技術」の普及が、内製化の動きを加速していることは、間違えないでしょう。
もはや、「作る技術」を前提に、組織力で人を集めて工数を稼ぐというビジネス・モデルは、将来の伸びを期待することはできません。「作らない技術」を前提に、ビジネス・モデルを組み立て直す必要に迫られています。
このような状況にあって、どのようなビジネス・モデルが、考えられるかについては、以下の記事にまとめてありますので、よろしければご覧下さい。
「作らない技術」が、当たり前の世の中になって、営業とエンジニアの役割やスキルも見直さなくてはなりません。
まず、営業についてですが、マーケティングとの役割分担を本来のあるべき姿に戻し、営業が、クロージングの役割に注力できるようにしなくてはなりません。
マーケティングの役割は、本来、市場調査、企業ブランド向上、案件創出(デマンドジェネレーション)です。市場調査と企業ブランド向上は、やってきたという企業は少なくはありませんが、デマンドジェネレーションについては、営業に背負わせてきた企業が圧倒的です。デマンドジェネレーションとは、案件を見つけて、その確度を高め、クローズを担う営業に、その案件を引き渡す機能です。これを組織的に行う必要があります。具体的には、デマンド・センターの組成です。
コロナ禍にあって、顧客との直接的な接触を制限される中、ウエットな人間関係を前提とした昭和な営業活動は、使えなくなりました。そんな状況であるにもかかわらず、デマンド・ジェネレーションまで、営業に背負わせるのは、営業の生産性を著しく低下させます。
また、「作らない技術」が前提となり、ひとつひとつの案件規模が小さくなり、効率よく案件を作らなければ、売上を確保することができません。そのためにもデマンド・ジェネレーションを営業から切り離し、組織的な取り組みとして、営業活動の生産性を高めてゆくことは、必至な状況です。
また、ユーザー企業による内製化の拡大は、ITを前提としたビジネス・モデルの開発やビジネス・プロセスの作り直しをすすめてゆくことになります。そこでの営業の役割は、必然的に経営や事業に関与し、ITを活かすためのシナリオライターとして、事業の最前線からITのニーズを引き出し、ビジネスの機会を生みだすことです。
その前提として、営業はこれまでにも増して、高いレベルでのテクノロジーの常識や、事業や経営についての知識も持たなくてはなりません。営業は、知識力を駆使したビジネス・プロデューサーとしての能力を発揮することが必要になります。
エンジニアについては、「作らない技術」が普及する中、工数として「ひと山いくら」的計算ではなく、圧倒的な技術力でひとり一人の価値を高め、高額商品として、「お値段はいくら高くても構いません」的な存在にしなくてはなりません。
多様な専門領域で、秀でた人材を育て、高いギャラでも買ってもらえるエンジニアを提供することです。素質ある人材を育て、才能を開花させ、華々しいステージに送り出し、高額の報酬を払う「タレント・マネージメント企業」のような役割を担う必要があるでしょう。
お客様が、内製化を拡大するにしても、このような人材は圧倒的に不足しています。例えば、次のようなITアーキテクチャーやコンピューター・サイエンスに関わる高い専門性を持った人材を自前で賄うことは容易なことではありません。
- データベースやトランザクション、ネットワークなどを設計する知識やスキル
- アジャイル開発やDevOpsなどの開発や運用に関わる知識やスキル
- ITサービスやツールなどを目利きし実践の現場で使えるようにするスキル など
このような知識やスキルで、お客様主導の内製チームに入り、エンジニアリングの指導的立場あるいは教師として、お客様にスキルをトランスファーするといった「内製化支援」が、大きな需要を生みだします。
そのあたりのことについては、以下の記事にまとめてありますので、よろしければご覧下さい。
昭和な時代から受け継がれてきた、営業とエンジニアの役割やスキルを再定義しなければなりません。それは、同時に、「工数で稼ぐ」から「技術力で稼ぐ」へと、事業目的を再定義することでもあります。
これは、経営の問題です。時代の趨勢に抗うことはできませんから、このような施策を先送りにしていれば、優秀な人材が、いなくなってしまいます。そうなる前に、変化の底流を見据えて、変革の鉈を振り下ろすべきでしょう。
【最終回】9月7日・新入社員のための「1日研修/一万円」
最終回・9月7日(水)募集中
社会人として必要なデジタル・リテラシーを学ぶ
ビジネスの現場では、当たり前に、デジタルやDXといった言葉が、飛び交っています。クラウドやAIなどは、ビジネスの前提として、使われるようになりました。アジャイル開発やDevOps、ゼロトラストや5Gといった言葉も、語られる機会が増えました。
そんな、当たり前を知らないままに、現場に放り出され、会話についていけず、自信を無くして、不安をいだいている新入社員も少なくないと聞いています。
そんな彼らに、いまのITやデジタルの常識を、体系的にわかりやすく解説し、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうというものです。
【前提知識は不要】
ITについての前提知識は不要です。ITベンダー/SI事業者であるかどうかにかかわらず、ユーザー企業の皆様にもご参加頂けます。