「社会環境が複雑性を増し将来の予測が困難な状況」
いま、私たちがおかれているこのような状況を「VUCA(ブーカ)」と呼びます。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、2016年のダボス会議(世界経済フォーラム)で使われ、注目されるようになりました。昨今は、ビジネスシーンでも一般的に使用されており、働き方や組織のあり方、経営などに関わる考え方の前提にもなっています。コロナ禍によって、我々は身をもってこのVUCAを体験したわけです。
このようなVUCAの時代を生き抜くためには、変化に俊敏に対応できる圧倒的なスピードを手に入れなくてはなりません。そのために「デジタル」は、不可欠の手段です。
そんな、「デジタル」を駆使するためには、ソフトウェア開発にも、変化に俊敏に対応できる圧倒的なスピードが必要です。しかし、従来型の手法では、対処できません。
「技術的負債」という言葉があります。ソフトウェア開発における概念で、システム開発においても技術的な借金があり、借金をすると利子を払い続けなければならないのと同じように、システムを構築すると利子としてシステムを改修し続けなければならず、それが負債のように積み上がることの比喩として、使われています。
最初は丁寧に、整然と設計され、その通り実装されたシステムでも、ビジネス環境やユーザーのニーズが変われば、それに対応して改修しなければなりません。それは、事業を維持するためには必要なことです。しかし、改修が積み上がる過程で、システムは複雑性を高め、カオスに向かってゆきます。その結果、改修は難しさを増し、改修のスピードは落ちてゆきます。そのうちにニーズの積み上がるスピードに、改修が追いつかなくなってしまいます。つまり、借金をして利子が積み上がり、利子さえも返せなくなって債務超過に陥ってしまうというわけです。
このような「技術的負債」を回避するためには、次のようなことに取り組まなくてはなりません。
- ビジネスの成果に貢献するコードに絞り込み、できるだけ作らないことを目指す。
- システムは、業務のプロセスの最小単位に分解して、その単位でテストし、実装する。
- それぞれは、少ないコードなので、バグは排除され高品質になり、しかも独立した業務プロセス単位にメンテナンスができますから、変更への即応力も担保される。
- 可読性の高いコードを目指すことで、マニュアルなどのドキュメントがなくても機能が理解できるので、システムの属人化を排除できる。
アジャイル開発、マイクロ・サービス・アーキテクチャは、これらのための有効な方法論です。また、インフラやプラットフォームもまた、このスピードに同期させなくてはなりません。だから、サーバーレスやコンテナを前提に、ソフトウェアの本番環境へのデプロイを、安定稼働を保証しながら、高頻度で行えるようにしなくてはなりません。クラウドの活用やDevOpsは、そのために必要となります。
変化が加速するVUCAの時代では、こうやって、「技術的負債」を膨らませることなく、変化に俊敏に対応できる圧倒的なスピードを手に入れる必要があります。
ただ、このような取り組みを成功させるためには、これに関わる人たちもまた同様のスピードが求められます。そのために必要となるのが、「心理的安全性」です。
「心理的安全性」とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」、つまり、「このチーム内では、メンバーの発言や指摘によって人間関係の悪化を招くことがないという安心感が共有されている状態」のことです。
心理的安全性があればこそ、自律的、自発的に改善して、より付加価値の高い仕事へと時間も意識もシフトしてゆきます。また、失敗を繰り返しながら高速で試行錯誤を繰り返すことが許容される雰囲気の中であればこそ、イノベーションが生まれます。
「やらされるのではなく、自発的、自律的によりよい状態をめざす」
心理的安全性とは、そんな組織風土のことです。この心理的安全性が欠如している組織では、上記に述べたような「技術的負債」を解消することはできません。
「うちは大丈夫!心理的安全性は担保されているよ」と云う方もいらっしゃるかも知れませんが、本当にそうでしょうか。例えば、「君の言うことも分かるけど」や「そんなことを言い出すと困るひとたちもいるからなぁ」、「あなたの言うことは間違ってはいない!でも、時期尚早じゃないかなぁ」と優しく咎めてはいませんか?新しいことに取り組もうという人たちに、このようなやり方で「罰」を与えているとすれば、積極的に発言することを躊躇させてしまいます。そして、こんな空気が蔓延すると、改善や向上の意欲は削がれ、変化に俊敏に対応できる能力を失ってしまいます。
デジタル・テクノロジーの進化は、日進月歩です。昨日の最善は、今日の最善とは限りません。だからこそ、新しいことを積極的に取り込んで、改善と向上を継続しなければなりません。上記に説明した「技術的負債を解消する取り組み」も、いつまでも同じやり方が通用するわけではありません。最善の手法やサービスもまた、アップデートされ続けます。これに対処できなくてはなりません。だから、「自発的、自律的によりよい状態をめざす」組織の風土、「心理的安全性」が欠かせないのです。
新しいことへの不安があるのは当然です。だからこそ、心理的安全性を育てて、チームで議論し、不安を共有しつつ、新しいことにチャレンジし、改善と向上を促さなくてはなりません。
「いままでこのやり方でやって来たから」、「これが我が社のやり方だから」、「そう簡単に世間は変わりませんよ」
そんなことを言っていると、時代の変化に取り残され、もはやどうしようもない状況に追い込まれてしまいます。例えば、このようなことに、なってはいないでしょうか。
- クラウドを使いこなせる人たちが不足している。
- アジャイル開発やDevOpsがまともにできない。
- ゼロトラストができていない。提案もできない。
- コンテナやKubernetesが使えない。
- SREやマイクロサービスが分かる人材がいない。
もはや上記が当たり前になりつつある時代に、レガシーなテクノロジーしか分からない、使えないとすれば、これは時代から取り残されている証拠です。新しいテクノロジーやメソドロジーが毎日のように登場し、ユーザーは積極的にこれを取り入れようとしています。これをSI事業者やITベンダーに相談しても応えてもらえないなから、自分たちで何とかしようと内製せざるを得ないのです。
そのうちに世の中の変化のスピードに追いつかなくなってしまいまうでしょう。つまり、借金をして利子が積み上がり、利子さえも返せなくなって債務超過に陥ってしまいます。
私はこのような状況を「人間的負債」と呼んでいます。心理的安全性のない組織は、この「人間的負債」をどんどん大きくしているのです。
「人間的負債」を解消することこそ、優先すべきです。そうすれば、「技術的負債」など気にする必要などなくなります。
DXは、「デジタルを前提に変化に俊敏に対応できる企業に変わること」だとされています。そのためには、「技術的負債」と「人間的負債」を作らないことです。技術的方法論に囚われすぎることなく、人間的側面にも関心を向けて、変革に取り組まなくては、DXの実践が、すすむことはないでしょう。
【募集開始】新入社員のための「1日研修/一万円」
社会人として必要なデジタル・リテラシーを学ぶ
ビジネスの現場では、当たり前に、デジタルやDXといった言葉が、飛び交っています。クラウドやAIなどは、ビジネスの前提として、使われるようになりました。アジャイル開発やDevOps、ゼロトラストや5Gといった言葉も、語られる機会が増えました。
そんな、当たり前を知らないままに、現場に放り出され、会話についていけず、自信を無くして、不安をいだいている新入社員も少なくないと聞いています。
そんな彼らに、いまのITやデジタルの常識を、体系的にわかりやすく解説し、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうというものです。
【前提知識は不要】
ITについての前提知識は不要です。ITベンダー/SI事業者であるかどうかにかかわらず、ユーザー企業の皆様にもご参加頂けます。
デジタルが前提の社会に対応できる営業の役割や仕事の進め方を学ぶ
コロナ禍で、ビジネス環境が大きく変わってしまい、営業のやり方は、これまでのままでは、うまくいきません。案件のきっかけをつかむには、そして、クローズに持ち込むには、お客様の課題に的確に切り込み、いまの時代にふさわしい解決策を提示し、最適解を教えることができる営業になることが、これまでにも増して求められています。
お客様からの要望や期待に応えて、迅速に対応するだけではなく、お客様の良き相談相手、あるいは教師となって、お客様の要望や期待を引き出すことが、これからの営業に求められる能力です。そんな営業の基本を学びます。
未来を担う若い人たちに道を示す
新入社員以外の若手にも参加してもらいたいと思い、3年目以降の人たちの参加費も低額に抑えました。改めて、いまの自分とこれからを考える機会にして下さい。また、人材育成のご担当者様にとっては、研修のノウハウを学ぶ機会となるはずです。教材は全て差し上げますので、自社のプログラムを開発するための参考にしてください。