次の質問にお答え頂きたい。
質問1:我が国は少子高齢化により労働人口が減少する。そうなれば、工数積算型の収益モデルでは労働力を確保できないので、売上を伸ばすことができない。また、若者の採用が減少する一方で既存社員の高齢化も進むため原価が上昇する。
提供できる工数が減少し原価が上昇するならば、市場における単金は上昇しなければならない。しかし、一方で自動化やクラウド化がすすむこと、さらにはオフショアの活用がすすむことから、それらとの競合があるので単金を上げられない、あるいは値下げの圧力が高まってゆくと考えられる。このような状況に於いて、今後、売上や利益を拡大するためにはどうすればいいのかを答えなさい。
質問2:これからパブリック・クラウドへのシフトが拡大すると考えられる。短期的に見れば、既存システムをパブリック・クラウドへ移行することに伴う工数需要が期待できるが、新規システムについてはクラウド・ネイティブすなわちサーバーレス・アーキテクチャーやFaaS、PaaSなどを前提としたシステムの開発や運用が前提となると、案件単位の工数需要は縮小する。
ビジネスのデジタル化の需要拡大に伴ってクラウド・ネイティブの開発需要は増大することから、案件規模は縮小するものの案件数は拡大すると期待される。しかし、クラウド・ネイティブはインフラの構築を伴わず運用の自動化範囲は拡大する。さらには、アジャイル開発やDevOpsのスキルは前提とされるだろう。このような人材を増やすために、どのような取り組みをおこなう必要があるのかを答えなさい。
質問3:工数積算型の収益モデルへの依存を減らすためには、それに変わる新たな収益事業を持たなくてはならない。しかし、多くの企業で以下のような現状が見られる。
- 新規事業は既存の収益構造と異なるにもかかわらず工数積算型のビジネスと同様に短期的な売上や利益を求める傾向にあり、その基準に見合わない企画は評価も実行もされない。
- 新規事業であるにもかかわらず、既存市場の統計的な裏付けや従来と同様の成功体験に基づいたビジネス・ロジックを要求される。そのような説明ができない、あるいは、新しいテクノロジーや社会的価値観のトレンドについての感性が乏しいために「ピントこない」人たちが「理解できない」や「リスクが高い」といった根拠なき理由で、斬新なアイデアを排除してしまう。
- 別に本業を抱えるメンバーによって構成された「新規事業開発プロジェクト」によって新規事業開発の取り組みがおこなわれている。ここでの取り組みは自らの業績には反映されないので、業績が評価される本業が忙しくなったりトラブルに陥るとそちらを優先されたりすることとなり、プロジェクトが活性化せずやがては消滅する。
このような状況を打開し、新規事業を具体的な成果に結びつけるためには、どのような取り組みをおこなえばいいのかを答えなさい。
質問4:既存の情報システムの多くは、事業部門の社員が主体的におこなう「本業」を支援するために、納期の短縮やコストの削減をおこなう「道具」として構築、維持されてきた。そのためコスト削減は宿命的要件であって、その手段として開発や運用の外注がおこなわれてきた。需要があっても利益をあげにくい所以である。SI事業者はその要請に応えるために労働力を提供してきた。その窓口となっていたのが「情報システム部門」である。
一方、「ビジネスのデジタル化」あるいは「攻めのIT」、さらには「デジタル・トランス・フォーメーション」は、「ITを前提とした事業の差別化や新たな顧客の創出」であることから、これは企業の「本業」そのものである。
「本業」は企業のコア・コンピタンスなので、外注化ではなく内製化をすすめようという動きが拡大する。そして事業部門が主管し、システム開発・運用管理は事業活動の一部に組み込まれる。このような事業部門が主管するシステムはコストではなく投資対効果で評価するので、ビジネスの成果に大きく貢献できれば売上や利益の拡大が期待できる。
情報システム部門を窓口としてきたこれまでの需要は「要求された労働力を安く迅速に調達する」ことであり、QCDを守って納品することであった。しかし、事業部門が主体となると「テクノロジーを活かしてビジネスの成果に貢献するためのアイデアや方法の提案とそれを実現する能力」が求められ、高いコストパフォーマンスと技術力が必要となる。
需要があっても利益をあげにくい情報システム部門を対象としたビジネスから、高い技術力と提案力があれば収益を拡大できる事業部門へと顧客チャネルを拡げ、彼らの内製化を支援する業務へとシフトしなければならない。そのためにどのような取り組みをすればいいのか答えなさい。
質問5:事業構造の転換を図るべく、既存の収益の主体となっているフロー型ビジネスからストック型ビジネスあるいはリカーリング型ビジネス(継続的な利益を生み出すビジネス・モデル)の拡大を図る経営方針を示す企業は多い。しかし、そのことは、短期的な売上や利益の減少を許容しなければならない。一方で、事業の業績評価は、無条件に売上や利益を前年度と比較して拡大するように求めている。
現場は業績が評価されることで昇給やボーナスの増加、昇進となるので、従来型のビジネスを優先する。しかし、それは経営方針に反することになってしまう。このダブル・スタンダードが現場の混乱を招き、人心を疲弊させ、自社へのロイヤリティを失わせる原因にもなっている。
このダブル・スタンダードを解消し、経営方針と業績評価基準を一致させるには、どのような施策や制度を実現すればいいのかを答えなさい。
さて、皆さんは、この5つの質問に答えられるだろうか。特に経営者や幹部の方は、この問いに明確に答える責任があることは言うまでもない。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
LiBRA 10月度版リリース====================
・新たに【総集編】2018年10月版 を掲載しました。
「最新のITトレンドとこれからのビジネス戦略」研修に直近で使用しているプレゼンテーションをまとめたものです。アーカイブが膨大な量となり探しづらいとのご意見を頂き作成したものです。毎月最新の内容に更新します。
・アーカイブ資料につきましては、古い統計や解釈に基づく資料を削除し、減量致しました。
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ビジネス戦略編
【更新】UberとTaxi p.10
【更新】もし、変わることができなければ p.16
人材開発編
*変更はありません
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】モノのサービス化 p.34
【更新】モノのサービス化 p.37
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【更新】AIと人間の役割分担 p.12
【更新】自動化から自律化への進化 p.24
【更新】知的望遠鏡 p.25
【更新】人に寄り添うIT p.26
【更新】人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係 p.64
【更新】なぜいま人工知能なのか p.65
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
サービス&アプリケーション・開発と運用編
【新規】マイクロサービス ・アーキテクチャ p.62
【新規】マイクロサービス・アーキテクチャの6つのメリット p.63
【新規】マイクロサービス・アーキテクチャの3つの課題 p.64
【新規】FaaS(Function as a Service)の位置付け p.68
ITインフラとプラットフォーム編
【更新】Infrastructure as Code p.78
【新規】Infrastructure as Codeとこれまでの手順 p.79
【更新】5Gの3つの特徴 p.235
クラウド・コンピューティング編
【更新】クラウドの定義/サービス・モデル (Service Model) p.41
【更新】5つの必須の特徴 p.55
【新規】クラウドのメリットを活かせる4つのパターン p.57
テクノロジー・トピックス編
*変更はありません。
ITの歴史と最新のトレンド編
*変更ありません