「IoTについて、教えてもらえませんか?我が社は、どのように取り組んでゆけばいいのかを話をしてもらえないでしょうか?」
ある設備機器関連の企業からこんな研修のご相談を頂きました。この会社以外にも、IT企業ではない企業から、このようなご相談を頂く機会が増えています。
ITあるいはデジタル・テクノロジーの積極的な活用が、事業戦略上不可避であるとの認識は、もはや広く行き渡っています。しかし、そんな自覚のある企業に話しを聞けば、ITベンダーやSI事業者に相談しても、「何をしたいか教えてもらえれば、その方法を提案します」というスタンスを崩さないというのです。
また、自分たちにできること、あるいは自社のサービスや製品の範疇でしかテクノロジーを語ってくれません。お客様の経営や事業に踏み込んで、何をどのように変えてゆけばいいのかを一緒に考え、広くテクノロジーのトレンドや可能性から助言を与えてくれるようなことはないというのです。
だから「共創」が大切だとIT企業各社は標榜しています。しかし、主導権は常にお客様であり、自分たちはサポート役として助言をする立場を越えようとしません。自らもリスクを共有し、お客様と一緒になって新しいビジネスを作って行くことが「共創」であるとすれば、本来の想いからはかけ離れた状況となっています。
お客様とITベンダー/SI事業者とのこのような意識のズレが拡がりつつあることを自覚できていないとすれば、これはかなり深刻な状況です。
昨今、デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation / DX)という言葉を盛んに目にするようになりました。DXとは、デジタル・テクノロジーを駆使して、現場のニーズにジャスト・イン・タイムでビジネス・サービスを提供できる、組織や体制、ビジネス・プロセス、製品やサービスを実現する取り組みです。
合理化や生産性向上のためのシステム開発でもなければ、モバイルやインターネットを駆使した新しいデジタル・ビジネスを作ることでもありません。経営や事業のあり方を根本的に変えてしまおうというのです。それにより、ビジネスの価値基準を転換し、圧倒的な競争力を手に入れることができるのです。
価値基準を転換するとは、いままで1万円が相場だった金額を100円でも十分に利益がでるようにすることや、1週間が常識だった納期を翌日にしてしまうように、これまでの当たり前を新しい当たり前に置き換えてしまうことです。
こんな取り組みにITを含むデジタル化投資はシフトしてゆきます。ITビジネスの成長のチャンスは、ここに関わってゆけるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
このような状況であるにもかかわらず、いまだ次のようなことをいまだ平気で言っているとすれば、大いに認識を改めるべきです。
「私たちの会社は、その分野は専門ではないのでできません。」
「それは私と担当が違いますので、あらためてそちらの担当者を同行させます。」
「うちはデータベースの構築に自信があります。そのための認定エンジニアを多数抱えています。」
DXがビジネスのあり方を根本的に変えて行こうという取り組みであるならば、ITベンダーやSI事業者は、経営や事業に関わる人たちにテクノロジーの価値とビジネスへの貢献の関係を説明できなくてはなりません。例えば、IoTであれば、モノがネットワークでつながることではなく、つなげることでどのような社会価値やビジネス価値を産み出せるかを説明できなくてはなりません。そのときには次のような物語を描き、IoTの価値をお客様に説明できなくてはなりません。
誰かが自宅で心臓発作を起こします。たぶん発作の前にその人が付けているウェアラブル・デバイスがその予兆を検知して、本人に注意を促し予防措置をとるよう喚起するでしょう。同時にヘルスケア・サービスのサポートセンターに連絡が入り、音声応答システムが起動し自動で様子を尋ねてくれます。
本人が返事できないことが確認され、倒れていること、脈や呼吸が乱れていることがウェアラブルのデータから判別できたので、直ちに救急車の出動が要請されます。ところが、患者宅への最短のルートは工事のため通行止めです。そこでカーナビには工事現場を迂回する最短ルートが表示されます。信号は救急車の移動に合わせて自動で制御され、渋滞を回避します。
同時に病院への手配も行われ、カーナビにはどの病院に運べばいいかの指示が出されます。病院の医師にも患者の状態や既往歴などのデータが送られ、対処方法についてのアドバイスが示されます。そして、必要な準備するように通知されます。
家の鍵は緊急事態であることから自動的に開錠され、救急隊が直ちに患者を運び出し病院に搬送すします。患者は発作から15分もかからず病院に運ばれ大事には至りませんでした。
データをつなぐことだけではビジネス価値は生まれません。データを介して物語をつなぐことです。そこに価値が生まれるのです。経営や事業に関わる人たちにテクノロジーの価値とビジネスへの貢献の関係を説明するとは、このような物語を語ることなのです。
テクノロジーは価値を生みだす物語があってこそ社会やビジネスに貢献します。ビジネス開発とはそんな価値ある物語を描く取り組みです。テクノロジーの発展は、これまでには考えられなかった物語を描くチャンスを増やしてくれます。見方を変えれば、テクノロジーの進化は、それだけ沢山のビジネス・チャンスを生みだしてくれるのです。
自分の専門分野を狭めてしまわないことです。事業や経営、テクノロジーの全般にわたって、広い知見を持つことです。もちろん、専門分野が不要であると言いたいわけではありません。経営や事業について、そしてテクノロジーの仕組みではなく価値について、クロスオーバーに相談できる存在にならなければ、入口を作れないと言うことです。
また、テクノロジーの実装は、専門的で高度なスキルが求められる場合がますます増えています。それらを全て自分たちだけでまかなうことなど到底できません。だから、オープンに広く緩い連係を維持し、いざとなれば必要なスキルをダイナミックに結集できるオープン・イノベーションに取り組む必要があるのです。
お客様の事業や経営に踏み込んで、テクノロジーの価値を語る力がなければ、「共創」などという理念だけの看板は引き下げるべきでしょう。
お客様はシステムを作ってもらうことをIT事業者に期待しているのではありません。ビジネスの成果に貢献することを期待しているのです。そしてIT事業者である以上、ITでの貢献を期待します。それなのに旧態依然とした知識や方法論を前提に、テクノロジーの未来を語れない相手に相談しようなんて思わないでしょう。ビジネスへの貢献の物語を語れない相手に何を相談すればいいのでしょう。
そんなお客様の期待に応える心構えと備えはできているでしょうか。DXはいまそんな課題をITベンダーやSI事業者に突きつけているのです。
お客様と一緒に参加しませんか?
内容:全3回の講義と演習/受講者と講師のコミュニケーション
- 2月26日(月)第1回 最新のITトレンドとこれからのビジネス戦略
- 4月27日(金)第2回 デジタル戦略を実践するための手法とノウハウ
- 5月29日(火)第3回 未来創造デザインによる新規事業の創出
2月14日(水)よりスタートする次期「ITソリューション塾・第27期」の受付を開始致しました。
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日程 2018年2月14日(水)~4月25日(水) 18:30~20:30
回数 全11回
定員 80名
会場 アシスト本社/東京・市ヶ谷
料金 ¥90,000- (税込み¥97,200) 全期間の参加費と資料・教材を含む
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【お願い】早期に定員を超えると思われますので、まだ最終のご決定や参加者が確定していない場合でも、ご意向があれば、まずはメールにてご一報ください。優先的に参加枠を確保させて頂きます。
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第27期は、これまでの内容を一部変更し、AIやIoTなどのITの最新トレンドについての解説と共に、そんなテクノロジーを武器にして、どうやって稼げばいいのかについて、これまで以上に踏み込んで考えてゆこうと思います。また、働き方改革やこれからのビジネス戦略についても、皆さんに考えて頂こうと思っています。
SI事業者の皆さんには、これからのビジネス戦略やお客様への魅力的な提案を考える材料を提供します。
情報システム部門の皆さんには、自分たちのこれからの役割やどのようなスキルを磨いてゆく必要があるのかを考えるきっかけをご提供します。
講義で使用する500ページを超える最新のプレゼンテーションは、オリジナルのままロイヤリティ・フリーで提供させて頂きます。お客様への提案、社内の企画資料、イベントでの解説資料、勉強会や研修の教材として、どうぞ自由に活用してください。
古い常識をそのままにお客様の良き相談相手にはなれません。
「知っているつもりの知識」から「実践で使える知識」に変えてゆく。そんなお手伝いをしたいと思っています。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
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・デジタル・トランスフォーメーションについて大幅に解説を増やしました。
・【講演資料】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション を新規に掲載しました。
・量子コンピュータについて、チャートの他に解説文を作りました。
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追加・更新の詳細は以下の通りです。
プラットフォーム&インフラ編
【改訂】サーバー仮想化とコンテナ p.94
【新規】ビジネスとしてのランサムウェア p.113
ビジネス戦略編
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.4
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは何か p.5
【新規】「限界費用ゼロ社会」の実現を支えるデジタル・トランスフォーメーションp.6
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの全体像 p.7
【新規】デジタルトランスフォーメーションとCPS p.8
【新規】デジタル・トランスフォーメーションを支えるテクノロジー p.9
【新規】デジタル・トランスフォーメーション実現のための取り組み p.10
【新規】デジタル・トランスフォーメーションをとは p.11
【新規】デザイン思考・リーン・アジャイル・DevOpsの関係 p.16
【新規】SIビジネスとして注力すべきテクノロジー(解説付き) p.17
【新規】デジタルトランスフォーメーション時代に求められる能力 p.20
サービス&アプリケーション・先端技術編/IoT
【新規】機能階層のシフト p.46
サービス&アプリケーション・先端技術編/人工知能とロボット
【新規】手順が決まった仕事は機械に置き換わる p.18
【新規】深層学習の学習と推論 p.52
【新規】「AIカント君」の可能性について p.92
開発と運用編
【新規】DockerとKubernetesの関係 p.45
【新規】システム開発のこれから p.62
テクノロジー・トピックス編
【新規】スマート・コントラクト p.53
【新規】量子コンピュータについての解説文 p.67-68
ITの歴史と最新トレンド編
*変更はありません
クラウド・コンピューティング編
*変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
【講演資料】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション を新規に掲載しました。