平成29年度 新入社員のタイプは「キャラクター捕獲ゲーム型」
キャラクター(就職先)は数多くあり、比較的容易に捕獲(内定)出来たようだ。一方で、レアキャラ(優良企業)を捕まえるのはやはり難しい。すばやく(採用活動の前倒し)捕獲するためにはネット・SNS を駆使して情報収集し、スマホを片手に東奔西走しなければならない。必死になりすぎてうっかり危険地帯(ブラック企業)に入らぬように注意が必要だ。はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向も(早期離職)。モチベーションを維持するためにも新しいイベントを準備して、飽きさせぬような注意が必要(やりがい、目標の提供)。(新入社員意識調査・特徴とタイプ・日本生産性本部)
ネタとして面白いとは思いますが、本当にそうなのでしょうか。自分の時代を考えてみると、新入社員の実体は大して変わらないようにも思えます。
自分で考えて行動できない、保守化している、覇気がないなどと評価する大人たちもいますが、自分たちの時代を懐かしみ、あたかもその時代こそが良かったのだと言わんばかりに、あえて、その違いを強調しているようにも思えてしまいます。また、そんな議論の中に、そういう若者達を世の中に送り出した自分たちの責任について語られることは少ないようです。
ITソリューション塾をもう9年やっています。これまでに何人かの新入社員が、自らの意志でこの塾の門をたたきました。なぜ参加したいのかと聞くと、「配属が決り、現場に出て、何も知らないことに愕然としました。このままでは、やっていけません。ぜひ、勉強させてください。」というものでした。
もちろん、会社の正規の研修ではありません。ブログで見つけて連絡してきたとのことですが、当然、参加費は自腹です。それでも参加したいという若者もいるのです。
このように志の高い若者もいる、そうでないものもいる。時代は変わっても、いつの時代も、いろいろな若者がいるということには何ら変わりがありません。
もちろん、それぞれの時代の社会環境の違い、そこから生ずる若者の意識の違いまでも否定するつもりはありません。例えば、社会学者である山田昌弘氏の著「なぜ若者は保守化するのか」を読むと、なるほどとうなずけることも少なくありません。
産業のサービス化、IT化の流れの中で、複雑で知的な労働については正社員として雇用し、単純労働は非正規雇用者で賄う。結果として、正社員需要が減っている。
ITやサービスを主体とする知識型産業の富の源泉は、土地や工場などではなく、能力のある人間である。そうなると、土地のある地方であることの必然性は無くなり、効率の点から都会に人が集まり、富も集中する。結果として地方が衰退する。
少ない正規雇用と都会への集中、産業の空洞化により、市場の成長も限られてきた。高度経済成長の時代は、努力すれば報われる「努力保証社会」であったが、努力を積み重ねても、収入や社会的地位に直結することはなく、努力をしても「バカらしい」という意識を生み出している。だから、成功は、「宝くじ」頼みであり、運を天にまかせるしかないというあきらめが生じている。
そんな中で、自分の生活の安定を図らなければならず、結果として保守的な志向を持たざるを得ないというものです。
確かに、このような社会的な背景から生まれる「若者意識」があることを否定するつもりはありませんが、だからといって、おしなべて、その平均を目の前にいる新入社員に押しつけて考える必要もないように思うのです。
また、「我が社は、実践で人を育てる。」だから、OJTで十分という会社もあります。その志は、立派だと思います。しかし、実際のOJTの現場は、先輩社員が、部下を単なる雑用係として使っているだけであり、目標設定はなし、OJTリーダーに育成のノウハウもなければ、志もないといった現場にであうことがあります。
確かに、これで育つ若者もいるのですが、それはOJTの成果ではなく、「これじゃあ大変だ」という本人の危機感であり、自助努力でしかないのです。つまり、育つか育たないかは、本人任せのほったらかしであり運任せです。
育たなければ、あいつには才能がなかったとか、仕事があっていなかったと自らの責任を棚上げし、それをOJTといってはばからない無神経を悲しく思います。
また、山田氏の言うかつての「努力保証社会」では、お客さまに行けば仕事がもらえました。「靴底を減らして、なんぼの世界」だったわけで、いま管理職の立場にいる人の中にも、それで成功した人も多いと思います。
しかし、もはやそんな時代ではないのです。靴底を減らして、お客さまを足繁く回っても、仕事をもらえる時代ではありません。そんな「いま」を見ようともせず、過去の成功体験をそのまま押しつけるだけではうまくゆくわけはなく、若者達に「バカらしい」という意識を持たせてしまうでしょう。
「バカらしい」と開き直るくらいならまだいいのですが、「自分は役に立たない。何をやってもダメだ」と考えて、心を病んでしまう場合もあります。こうなってしまうと、本当に不幸です。これは、本人の責任ばかりとも言えないように思います。
では、どうすればいいのでしょうか。まずはかつてのやりかたが、いまも通用するという思い込みを捨て、「こうすればうまくいくからその通りやりなさい」との主張を押しつけないことです。
身近な例で言えば、私が依頼された新入社員研修の講義の冒頭で、研修担当の方が「パソコンとスマホを鞄にしまい講義に集中してください」と指示され、彼らは当然のことのようにそれをしまいました。その後、講義を任された私は、担当者には申し訳なかったのですが、パソコンとスマホを改めて出させ、「分からないことあればその場で調べてください。それでも分からなければ質問してください」と伝えました。彼らの顔はぱっと明るくなり、活き活きとしていました。
彼らのリテラシーや感性に理解を示すことです。自分たちも会議で平気でパソコンやスマホをいじっているのに、それを研修だからと特別扱いして、過去の規範を押しつけるのも如何なものかと思います。
また、経験者として自らの体験から学んだ教訓やそれを実践でどのように活かせばいいのかといった成功の方程式、すなわち体験を伝えるのであれば、彼らの学びも多いと思います。しかし、「俺の若い頃はなぁ」と過去の体験をそのままに、教訓も経験も伝えられないとすれば、彼らには自慢話にしか聞こえません。それでは、育成はできません。
「本質おいては一致し、行動においては自由に、全てにおいては信頼を」
ドラッカーの著『経営者に贈る5つの質問』の一節です。まさに、本質を部下と語り合い一致する。後は信頼して、まかせておけばいいのです。そして、困ったことや助けを必要とするときが来たらすぐに行動するセーフティネットを提供する。そんな、係わり方こそが、新人を育てる心得ではないかと思っています。
自分で考えて行動できない若者が多くなったのではなく、このような現実を素直に受け入れられない大人達が多くなったことの方が、むしろ問題なのではと考えてしまいます。
また、これからの日本は、少子高齢化が加速し「若者が減る」社会になります。かつては、会社が若者を選別する時代でした。ところが、若者がすくなくなれば、若者が会社を選別する時代になるわけです。
株式会社サーバーワークス・代表取締役社長の大石良さんは、自らのブログの中で次のような提言をされています。
若者が減る時代の企業経営に求められることは「若手に来てもらう経営」であって、これをやらなければ(今まさに日本という国が老人とともに沈没しかけているように)企業も老人とともに年老いて滅びるしかない、ということを意味しています。
「若者は貢献意識に溢れていて、何か役に立つことをしたいと思っている」
という意識は事実として示されていますし、私達の実感とも合致します。社会のためになる仕事をしたいという想いは、私が社会人になったときの同世代人よりも、今の新入社員の方により強いものを感じます。
しかし、そういう取り組みを支援する社会的な合意や基本的な仕組みが欠落している。そういう風に若手が捉えてしまい、「頑張っても報われない」と諦めてしまっている姿がすけて見えます。
逆に言えば、
- 会社がきちんと社会的に意義のあるビジョンを示して
- 若手でも活躍できるチャンスを与えて
- 将来に渡る持続的な居場所とつながりを提供すれば
- 会社という仕組みはまだまだ機能するし、若者も会社も活躍できる可能性を示唆しているわけです。
先に紹介した「努力保証社会」の崩壊は、社会環境の問題ではなく、社会環境の変化に対応できない企業の問題なのだということでしょう。
「働き方改革」の本質はこんなところにあるのではないでしょうか。単に物理的な就労時間を短縮することではなく、自らが働きたい、役に立ちたいを引き出し、充実した仕事の時間を提供することです。充実した時間は、例え物理的な時間が長かったとしても短く感じられるでしょう。そんな心の就労時間を短縮することこそ、「働き方改革」が目指すべきことではないでしょうか。それは同時に、成長の喜びを実感させ、生産性や品質を高めてゆき、若者を惹き付けます。
これは、若者やベテランが世代を超えて共有できる価値観です。新人の採用や育成についても、そんな「働き方改革」と一体に考えてみては如何でしょうか。
ITソリューション塾・福岡・第2期 募集中!
知っているつもりの知識から、説明できる、実践に活かせる知識へ変えてゆく。そんな研修がスタートします。
東京で9年目を迎えるITソリューション塾には、既に1500名を超える卒業生がいらっしゃいます。また、昨年より大阪と福岡でも始まりました。特に福岡では、他の会場にはない「自分のビジネスを成功させるためのワークショップ」もあわせておこないます。
ITについての体系的な知識を身につけたい、提案力を高めたい、コンサルや交渉の力を高めたい。そんな皆さんのための実践的プログラムです。ふるってご参加下さい。
日程 | 2017年7月11日〜10月3日 全7回 13:30〜17:30 |
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回数 | 全7回 |
定員 | 40名 |
会場 | 福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター |
料金 | ¥65,000 (税込み¥70,200-) 全期間の参加費と資料・教材を含む |
詳細 | ITソリューション塾[福岡] 第2期 講義内容/スケジュール |
申し込み | 上記リンクのパンフレットをご参照ください。 |
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- 何ができるようになるのか?
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「知っている」から「説明できる」へ
実践で「使える」知識を手に入れる
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キーワードは耳にするけど、
それが何なのか、何ができるようになるのか、
なぜそんなに注目されているのか理解できてなかったりしませんか?
最新版(6月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
最新版【2017年6月】をリリースいたしました。
今月は、特にブロックチェーンや5Gについてのプレゼンテーションを充実させています。
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ビジネス戦略編
【新規】根拠なき「工数見積」と顧客との信頼関係の崩壊 p.32
【新規】工数ビジネスの限界 p.34
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTとAIの一般的理解と本当のところ p.15
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】自動化と自律化 p.14
【新規】学習と推論 p.27
【新規】うんコレ1枚でわかる画像認識 p.34
【新規】自動運転のためのプラットフォーム p.81
サービス&アプリケーション・基本編
変更はありません
開発と運用編
【新規】「仕様書通り作る」から「ビジネスの成果への貢献」へ p.11
クラウド・コンピューティング編
【変更】パブリッククラウド p.38
【新規】クラウドの見積り方(1)と(2) p.79-80
インフラ&プラットフォーム編
【変更】ウェアラブル=身体に密着するデバイス p.21
【新規】ウェアラブル・デバイスの進化 p.22
【変更】ウェアラブル・デバイスの種類と使われ方 p.23
【新規】これからのクライアントを占うキーワード p.25
【新規】ユビキタスコンピューティング = 10年前のIoT p.26
【新規】スマートフォーム p.27
【変更】ユビキタスからアンビエントへ p.28
【新規】ビーコン 事例 p.29
【新規】VR 事例p.30
【新規】AR 事例p.31
【新規】MR 事例p.32
【新規】セキュリティ対策対象の変化 p.112
【新規】コレ1枚でわかる第5世代通信 p.209-211
テクノロジー・トピックス編
【新規】ARM:2016年の売上高は16億8900万ドル p.22
【新規】ARM:ライセンスパートナー p.23
【変更】ARM:拡がる適用分野 p.26
【新規】ARM:CPU設計から製造まで p.27
【新規】ブロックチェーンとは何か p.33
【新規】ブロックチェーンの3つの特徴 p.32-36
【新規】ブロックチェーンで使われる暗号技術 p.37-38
ITの歴史と最新のトレンド編
【新規】ソフトウェア化するモノ p.11
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
- ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
- お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
ISBN 978-4-7741-8647-4Amazonで購入