ITの常識が変われば、そこに関わる私たちの仕事が変わるのは当然のことです。何がどのように変わるのでしょうか。そして営業の役割や仕事は、どのように変えてゆかなければならないのでしょうか。
ITインフラの構築と運用は、クラウドや自動化ツールに代替されてゆく
クラウドの普及によりインフラ構築の物理的作業は不要となります。サーバーやネットワーク機器の販売は減少し、それらの構築作業や保守・サポートの業務が減少することは避けられません。
また、運用管理には自動化ツールの利用が拡大し、人工知能の技術を活用して、高度な業務にも人手がかからなくなります。
アプリケーションの開発と運用はビジネス・スピードとの同期化を求める
ビジネス環境の不確実性はかつてないほどに高まり、変化が加速しています。ビジネスはその変化に即応できなければ、生き残ることはできません。一方で、ビジネスはITなしでは機能しなくなり、ビジネスとITの一体化は、これからもますます進んでゆきます。
ビジネス・ニーズが変われば、ビジネス・プロセスも変えなくてはなりません。そうなればITもまた変化のスピードに対応できなくてはなりません。これまで同様に要件を精査し仕様を固め、工数を積算して見積書を提出する。ユーザーがはじめて動くシステムを確認できるようになるのは半年後・・・。こんなことでは、お客様から切られてしまうのは必定です。
もちろんこれまでと同様の需要がなくなることはないにしても、仕事の量は増えず、利益を期待することはできません。「稼働率が上がっているのに利益率が下がっている」といった現実が、そのことを物語っています。
SaaSやPaaS、FaaS(Function as a Service/AWSのLambdaやMicrosoftのAzure Functionsなど)を積極的に利用し、ビジネス・スピードに同期化する取り組みがますます求められるようになります。それに伴い工数の需要は伸び悩み、利益はコストに近づいてゆきます。
また、開発と運用も「スピード」を担保できるやり方に変わらなくてはなりません。そのためには運用と開発の新しい仕事のやり方を実現する「DevOps」への取り組みは必至です。
ビジネスは競争力の強化のために、テクノロジーへの依存を高めてゆく
UberやAirbnbなが、既存のタクシー業界やホテル事業を破壊するほどの影響力を持ち始めています。
これまでITの役割は、業務の効率化やコスト削減に重心が置かれてきました。しかし、ITがもたらす新しい常識が、新しいビジネス・モデルを実現し、既存常識を崩壊に追んでいます。ITの役割は、ビジネスの競争優位を生みだすための新たな思想や手段を提供しはじめているのです。
人工知能やIoTなどの先端テクノロジーは、それを実現する基盤となります。だからといって自らそれらを開発しなくても、サービスとして利用できる時代になりました。それがビジネスの変化を加速する武器となります。
ビジネスの価値は、その事業そのものの機能から、それらを含むサービスや他のプレイヤーを巻き込んだエコシステムへと、重心を移しはじめ、ITはその基盤として重要性を高めています。
「ITの価値や需要はこれまでになく高まる一方で、工数需要は減少する」
いままさにそんな変化が加速しながら進行しているのです。ならば、ITビジネスの収益は工数提供の対価から、ビジネス価値すなわち「スピード・変革・差別化」の対価へとシフトしてゆかなければなりません。
営業はこの変化に、どう対処すればいいのでしょう。
「ITやビジネスのトレンドを掴み、お客様の未来を提案できなくてはならない」
ITはビジネスに新しい常識をもたらします。それが、お客様のビジネスをどのように変え、どう向き合うべきかを提言できなくてはならないでしょう。このような仕事はコンサルタントの役割だと思っているなら、営業の仕事はなくなります。
銀行の窓口業務がATMに変わり、店舗での書籍や物品販売はAmazonや楽天にシフトしてしまいました。それでも、銀行の窓口や店舗に足を運ぶのは、「自分は、どうすればいいのか」を相談するためです。そこには、まだまだ人間の知識や創造性が求められています。それとても人工知能に置き換わってゆくとすれば、お客様の人生や生活に踏み込んだ未来へのアドバイスが人間の役割となるでしょう。
IT営業もまた同様の変化、つまりは、お客様の未来の相談相手になることが求められるでしょう。そのためには、次の3つの力を磨かなければなりません。
- 知識力:お客様のあらゆる質問に答えられる知識の引き出しを増やし、その鮮度を維持しつつけること。
- 対話力:お客様と対話でき、悩みを聞き出して整理し、何が最適なゴールなのかを見つけ出すこと。
- 共創力:知識力と対話力を駆使して、お客様と一緒になって解決策を見つけ出してゆけること。
カタログに書かれているような機能や性能の説明、システム構成の策定や見積金額の積算、情報の収集や整理などの「知的力仕事」は、人工知能が代わりにやってくれます。しかし、何をゴールにするのか、それを実現するためのビジネス・モデルやビジネス・プロセスはどうするかは、これからも人間の役割です。
テクノロジーの進化の流れに棹をさしても、流れる方向が変わることはなく、やがては自分たちが流されるだけです。ならば、その流れの方向を見据えて、自らの役割を変えてゆくしかありません。
「それは会社の役割で、自分は与えられた仕事をするだけのこと」
そんなあなたにお客様は大切な仕事を任せたいとは思わないでしょう。それは、自分の営業成績と直結しています。
もはや会社に自分の人生を預けても一生面倒をみてもらえる時代ではありません。会社は自分の保護者でもなく、財産でもありません。自分力という財産を持ち、会社ではなく社会での価値を高めてゆくしかないのです。営業力もまた、そんな自分力の一部であると心得ておくべきです。
【募集中】ITソリューション塾・第24期
来年最初のITソリューション塾・第24期を2月8日(水)から開催します。第24期は、IoTやAIのビジネス戦略にも一層切り込んでみようと思っています。また、情報セキュリティの基本やDevOpsの実践についても、それぞれの第一人者から学びます。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
- 会場 : アシスト株式会社・本社@市ヶ谷
- 日程:2月8日(水)〜4月26日(水)の毎週1回×11回 *但し、3月最終週は休みとなります。
- 時間:18:30〜20:30
- 定員:80名(前回参加者 84名)
お願い
- 毎期早い段階で定員に達しています。手続き等で時間はかかるが、参加のご意向をお持ちの場合は、事前にメールにて、その旨をお知らせください。
- 個人でのご参加の場合は、消費税分を割り引かせて頂きます。
- 今回の期間は、予算期を跨ぐところもあるかと思いますが、今期または来期のいずれか、または、両期に分けて支払いという場合は、個別にお知らせください。
詳細のご案内、および、スケジュールのPDFダウンロードは、こちらをご覧下さい。
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
- ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
- お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
ISBN 978-4-7741-8647-4 Amazonで購入
人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から“あたらしい常識” の作り方が見えてくる。
12月改訂版をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
- 先進技術編のドキュメントが大幅に追加されたため、「IoT」と「人工知能とロボット」の2つのファイルに分割しました。
- アジャイル開発とDevOpsについてドキュメントを追加しました。
- 解説文を増やしました、
【講演資料とトピックス】
【改訂】ITソリューション塾・特別講義・Security Fundamentals / 情報セキュリティのジアタマを作る
【先進技術編】
「IoT」と「人工知能とロボット」のプレゼンテーションを分割しました。
IoT(92ページ)
【更新】モノのサービス化 p.29-30
【新規】コンテンツ・ビジネスの覇権 p.31
【新規】ガソリン自動車と電気自動車 p.32
【更新】ITビジネス・レイヤ p.49
【新規】インダストリアル・インターネットとインダストリー4.0 p83-84
人工知能(92ページ)
【新規】統計確率的機械学習とディープラーニング p.25
【新規】人工知能とは p.31
【新規】人工知能の得意分野と不得意分野 p.47
【新規】自動運転の定義 p.69
【基本編】(104ページ)
【新規】アジャイル・ソフトウエア宣言 p.59
【新規】アジャイル・ソフトウエア宣言の背後にある原則 p.60
【新規+改訂】DevOpsとは何か? p.66-69
【新規】DevOpsとコンテナ管理ソフトウエア p.74-77
【新規】マイクロサービス p.78
【新規】オーケストレーションとコレグラフィ p.79
【新規】AWS Lambda p.80
【新規】サーバーレスとサーバーレス・アーキテクチャ p.81
【ビジネス戦略編】(98ページ)
【新規】デジタルトランスフォーメーションの進化 p.7
新刊書籍「未来を味方にする技術」紹介 p.91
【テクノロジー・トピックス編】(49ページ)
【新設】FPGAについて新しい章を作り、解説を追加しました。 p.39-48
【ITの歴史と最新のトレンド編】(13ページ)
変更はありません。