新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)の文書管理クラウド・サービス「NSxpresⅡ」が、契約数を伸ばしています。ふつうの文書管理システムのようにも見えのですが、なぜこれほどまでにお客様を増やしているのかを、ご担当の方から伺ったことがあります。
「NSxpresⅡは、クラウド・サービスを提供しているわけではありません。文書管理サービスを提供しているんです。ご存知のように、捺印された公的な紙の契約書や建築図面は、法令によって長期保管が義務づけられています。これら文書を安全に保管し、必要な時にいつでも検索し、参照、印刷できるサービスを提供しているんですよ。」
お客様は、このような文書を大量に抱えています。そのために、大きな企業では、「文書管理室」のような専門の組織を持ち管理しているところもあるのだそうです。また、管理するためのシステムにも投資が必要です。そこで、NSSOLは、紙の原本を管理する倉庫業務、その文書のスキャンニング業務や必要な管理情報を文書管理システムに登録する業務をセットにしてサービスとして提供しています。これがNSxpresⅡという「サービス」なのです。
「実際の人手が掛かる業務は、倉庫業者さんにお願いしています。彼らとしても業務の付加価値が高まり、収益拡大にもつながるので、お互いにメリットがあります。」
システムの目線ではなく業務の目線から考えた解決策、それが、NSxpresⅡなのです。そして、それはお客様でもある倉庫業者さんとの協業にもつながり、ビジネス・リレーション強化につながっているようです。
「文書管理の基本的な仕組みは、どのお客様でも変わりません。しかし、管理の仕方やルールは、まちまちです。だから、お客様毎に業務要件を定義し、個別に仕組みを作って提供しています。特に法令に従わなくてはならない文書は、いずれのお客様も気を使います。だから、こういう対応が不可欠になるんですよ。」
SI事業者であるが故の強みを発揮しなければできないところです。
お客様に文書管理に必要な機能を提供しそれを使わせる「システム・ソリューション」ではなく、自らがシステムを使って業務上の課題を解決する「ビジネス・ソリューション」を提供する。これが、NSxpresⅡと言う「サービス」の本質といえるでしょう。
このようなITを使ってビジネス・サービスを提供するアプローチは、文書管理に限ったことではありません。様々な業務にこのようなアプローチができるのではないでしょうか。
NSSOLは、長年、契約書や図面などの文書管理システムの導入や開発に関わってきたそうです。そんな現場の業務知識やノウハウがあるからこそ、他社にはそう簡単にまねができないサービスを実現できたとのことでした。そして、なによりも業務における現場のニーズや課題を実感し、それに応えようとしたからこそ、こうやって需要を伸ばしているのだと思います。
このサービスを提供している部門は、インフラの構築や運用を担当する事業部です。そういう部門が、アプリケーション・サービスを提供していることには大きな意味があります。
オンプレミスのシステム構築やサポートのビジネスは、どんどんと厳しさを増しています。これを「サービス」で代替しようという考えは、何処にでもある話です。しかし、インフラに何の付加価値も与えず、ハードウェア提供からサービス提供に変えたところで、コモディティデあることに変わりはなく、はいずれ価格競争に陥ります。そしてまた、新たな競争を強いられることになるのは避けられません。
例えば、「クラウド・インテグレーション」と称する業務の中には、オンプレミスの物理マシンを仮想マシンに置き換えて、パブリッククラウドのIaaSに移行し、その運用管理も合わせて引き受けるというするサービスを提供している企業もあります。いまは需要はあるかも知れませんが、これだけではお客様のシステムにほとんど新たな付加価値は与えられません。いずれは、価格競争になるでしょうし、お客様もその事実に気付けば、需要もなくなってしまうでしょう。
NSSOLの取り組みそんな競争の土俵を変えようという取り組みでもあるのです。
ITを提供するビジネスから、ITを使うビジネスへ
そんな視点で、自分たちのビジネスを再定義してみてはどうでしょう。ITのノウハウもあれば、お客様のアプリケーションにも関わってきたわけですから、現場の課題やニーズを知ることができる立場にもあるわけです。
構築や運用の業務は、今後、クラウドや人工知能によって自動化が進み、工数を稼ぐことは難しくなってゆきます。ならば、これまでのノウハウを改めて棚卸しし、それらを武器に「ITを使ってビジネス・ソリューションを提供する」ことを模索することも、これからのビジネスを考えてゆくうえで、新たな視点を与えてくれるのではないでしょうか。
11月改訂版をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
- 「情報セキュリティのジアタマを作る」を新掲載!
- 「アテにされるためにはどうすればいいのか」そんな新しい講演資料も掲載しました。
- 他にも大幅にドキュメントを追加・更新致しました。解説文も増えています。
【講演資料とトピックス】
【新規】ITソリューション塾・特別講義・Security Fundamentals / 情報セキュリティのジアタマを作る
【新規】講演資料・アテにされる/どういうこと?どうすればいいの?
【サービス&アプリケーション・基本編】
【新規】オープンソース・ソフトウェア(OSS) p.74-90
オープンソース・ソフトウェアについて、全17ページの新しい章を作りました。
【サービス&アプリケーション・先端技術編】
【新規】IoTに期待される経済価値 p.10
【更新】IoTの2つの意味 p.16
【新規】IoTの仕組み p.17
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの進化 p.18
【新規】IoTの三層構造 p.43
【更新】クラウドから超分散へ p.45
【新規】LPWAネットワークの位置付け p.46
【新規】LPWAネットワーク 通信規格一覧 p.47
【更新】IoTのビジネス・レイヤ p.48
【新規】人工知能の適用領域 p.131
【インフラ&プラットフォーム編】
【新規】クラウド・コンピューティングの起源 p.25
【新規】メインフレーム、クライアントサーバー、クラウド p.107
【更新】ウェアラブル・デバイスの種類と使われ方 p.115
【新規】ユビキタスからアンビエントへ p.116
【新規】2014年以降のMicrosoftの新戦略 p.142
【新規】統合システム(Converged System)の分類 p.191
【新規】ハイパーコンバージドの仕組みと特徴 p.193-194
【更新】コンバージドとハイパーコンバージド p.195-196
【テクノロジー・トピックス編】
【新設+更新】FinTechとブロックチェーンについて新しい章を作り、ブロックチェーンの記述を大幅に増やしました。 p.24-37
【ITの歴史と最新トレンド編】
変更はありません。
【ビジネス戦略編】
追加・変更はありません。ただし、解説文を増やしました。