「結局は、人なんです。できる人は限られています。できない人をできるようにするのは簡単なコトじゃありません。」
このSI事業者は、情報システム部門にしか顧客チャネルはなく、既存システムの保守や運用が主な仕事です。しかし、予算には重石が載っかり増額は期待できません。それどころか、いまの業務内容や品質はそのままにコストを削減して欲しいというプレッシャーが常にかかっているそうです。
新規のシステム開発については、直接のお客様である情報システム部門は消極的です。彼らに求められる役割は、既存システムの安定稼働です。もしトラブルでも起こしシステムを停止させてしまったら「減点評価」されてしまいます。
一方で、情報システム部門は、業務システムについての積極的な提案は求められることはありません。むしろ、「業務のことは自分たちが決めるから、余計なことを言わないでくれ」といった空気感が漂っています。そのため、できるだけ「余計なこと」はしないで「減点評価」されないようにとのモチベーションがはたらきますから、彼らに新しい取り組みや新規案件の開発提案をしても暖簾に腕押しです。
現行業務をそのままにインフラをパブリック・クラウドに移行して、コスト削減を図ってはどうかという提案についても、システムのアーキテクチャが変わり運用も変わり、これまでと「同じやり方」はできませんから、これまで同様に安定稼働できないかもしれません。ですから積極的にはなれないのです。
ならば、経営者や業務部門にアプローチして、お客様のデジタル・ビジネスを支援し、新たな開発やサービス提供の案件を開拓しようと経営者は旗をふり、営業を鼓舞するのですが、「結局は、人なんです。できる人は限られています。」となり、思うように新規顧客開発が進まないという現実に直面しています。
同様の悩みを抱えるSI事業者がどれだけあるかは分かりませんが、決して少なくはないように思います。では、どうすればいいのでしょうか。次の3つのステップを取り組まれては如何でしょう。
ステップ1:「見える化」する
ご相談を頂いたこのSI事業者にも「できる人」はいるそうです。しかし、できる人はどんどんと自分でやってしまうので、組織としての力の底上げにはなりません。この状況を変えなくてはなりません。この状況を変える必要があります。
私は、いくつかの企業の営業力強化や営業組織の改革に取り組んできました。その経験から見えてきたことは、「できる営業の基本動作は同じ」という事実です。
「できる営業」は、一見個性的であり、自分の独自のやり方で成果を上げているようにみえるものです。そんな姿を見て、「あれは彼の生まれ持ったセンスだし、そう簡単にまねなどできませんよ」と、そのやり方から学ぼうとすることを避ける傾向にあります。しかし、そういうできる営業をインタビューし、集めてディスカッションをしてもらうと、案件発掘から受注に至る一連のプロセスは驚くほど似通っています。押さえるべきは確実に押さえています。そのプロセスが見事に一致しているのです。
私は、そんなできる営業が案件発掘から受注するまでにやっていることを、約30のプロセスに分解して整理してみました。それがこの表です。
これは、SI案件でオポチュニティを見極めたあとのプロセスを整理したものです。これ以外にも、どのように受注につながりそうな案件を見極めればいいのかといったことや、プロダクト案件についての仕事の進め方も整理し「見える化」しています。また、官公庁へのアプローチは民間とは異なる作法があるのでそちらについても整理してみました。
>> ITビジネス・プレゼンテーションライブラリー/LiBRA
このようなリストに頼らなくても、自社のできる営業から話しを聞き、「見える化」することで、そのノウハウを「できない営業」に伝えることができます。あるいは、このリストを参考に自社の言葉や経験を加味して加工されてもいいかもしれません。そうやって「できる営業」のノウハウを「見える化」し、組織のノウハウとして整理することが最初のステップです。
ステップ2:「使える化」する
「見える化」しても、それが使えなければ、効果は上がりません。ではどうすればいいかです。
すぐ思い浮かぶことは、「研修」です。しかし「研修」は知識を与え、やる気を起こさせるきっかけにはなりますが、現場に戻れば日常に埋没し、学んだことを実践の現場で活かすことは容易なことではありません。
そこで、「見える化」したプロセスをチェックリストにして実践の現場で使えるようにする「使える化」が必要になります。
日常の業務で研修のテキストを読み返して、自分の行動を確認するなとということはまずありません。だから、チェックリストにして「使える化」するのです。
もちろんチェックリストにしたからと言って、使うことにインセンティブがはたらかなければ、使ってはくれないでしょう。ですから、このチェックリストを使うことで、案件受注の効率と勝率が上がればいいわけです。
改めて、先のチェックリストを見て下さい。このチェックリストは、案件を受注するための「基本動作=行動」を一覧表にしています。何らかの行動を「やった」または「やっていない」のいずれかで評価できるようにしています。つまり、努力しているとか、検討しているという行動が見えない行為ではなく、「資料を渡した」や「合意を取り付けた」といった具体的で客観的に評価できる行動を一覧にしています。これをいま取り組んでいる案件に適用し評価してみることで、自分の案件は、受注までにまだ何をしなければならないのかが一目で分かりますし、仕事の抜けや漏れを確認することができます。そのため、自分のやるべきことが客観的に分かり、受注までの見通しが立ちます。そうすることで、余計な仕事を少しでも減らし、効率よく受注につなげることができるのです。
自分の仕事が見えることで、心に余裕が生まれ、やるべきことも示されます。それが使うことへのインセンティブとなるのです。
また、このチェックリストを「使える化」するためのマニュアルも用意しましたので、よろしければご活用下さい。
ステップ3:カタチを作る
「決心を固めてから行動しよう」や「気持ちを新たにしてからはじめよう」はうまくいかない行動です。まずはカタチが入ることです。
つまり、このチェックリストを使わせる仕組みを持つことです。例えば、週次の営業ミーティングではこのチェックリストで案件の進捗を報告させるとか、SEとの打ち合わせには事前にこのチェックリストでの報告を求めると言ったルールを決めることです。このようにカタチを作ってゆくことで、結果として決心は固まるのです。
「守破離」という言葉があります。わび茶を完成した千利休の教えを、和歌の形式にまとめた「利休道歌」のひとつです。
規矩作法 守り尽くして 破るとも 離るるとても 本ぞ忘るな
「守」とは先人の築き上げた「型」を守ることです。そこには、先人が苦労して成し遂げた経験が、織り込まれています。まずは、これを徹底してまねることで、先人の知恵を自分のものとして会得するのです。
この「型」を徹底的に守り通した上で、これをあえて破ってみる。自分ならではの工夫で、試してみる段階、それを「破」といいます。本来を知りつつ、自分なりにそのやり方をあえて破ることで、自分ならではの「型」を求める段階と言えるでしょう。
そして、それを他にも伝えられるほどに洗練させることができたならば、そこには、今までにはない「型」が生まれてくるのです。この段階を「離」といいます。
まずは、「型にはめる」わけです。ただ、これは本人の個性を無視するということではありません。先人の知恵を、あるいは成功している人のノウハウを体験的に会得しようという取り組みです。チェックリストはそのための手段です。
これを徹してゆけば、自ずと「破」の時期を迎え、個性を活かす機会が生まれてくるのです。
ところで「型=チェックリスト」を「守」らせる上で大きな壁があります。それは、「素直さ」です。新入社員や女性は、この壁は低いのですが、経験を積まれたベテランの男性は、プライドが邪魔をしてしまい、なかなか型を守れません。もちろん成功体験もあり、自分なりの型を持っていらっしゃるのは分かるのですが、自分の「経験」というバイアスから抜け出せず、客観的に自分をみようとはしないのです。「そんなことは分かっている。」とお考えなのかもしれませんが、それが改善や成長の妨げになっていることは否めません。
ですから、カタチを徹底するのです。そしてその通りにやってみて、成功を体験してもらうのです。そのためには、経営者や上級幹部の強い意志が必要であることは言うまでもありません。
「結局は、人なんです。できる人は限られています。できない人をできるようにするのは簡単なコトじゃありません。」
そのとおりです。だからこそ、こういう取り組みをして、「できない人」を「できる人」にしなければならないのです。
精神論を語り聞かせるよりも、カタチからはじめることのほうが、よほど成果を期待できるように思います。
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